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第4クール展望 こう戦う!

混沌のなかに生まれつつある大きな潮流が、最終クールを席巻する



 9月22日、高田保則の横浜FCへの期限付き移籍が発表された。湘南に在籍して9年、ユース時代も含めると12年という湘南の象徴ともいうべき選手の移籍に、内外を問わず駆け抜けた衝撃は小さくない。クラブも本人も、悩んだ末の決断だったことだろうと思う。

 それにしても今シーズンはいつにも増してシーズン中の出入りが激しい。高田とともに降格を知る時崎悠も水戸に移籍したし、つい先日は石田祐樹も徳島へ移った。また池田昌弘を皮切りに梅田直哉、カシアーノ、ゴーランと、相次いで補強も行なっている。

 湘南にかぎらず、さらにはサッカーという業界に留まらず、この世界を構成するあらゆる文化において浮き沈みは存在する。それは数多の文化の宿命だし、逆にいえばそれこそが文化たる所以ともいえる。この世に産声を上げ、次第に成長し、壁に阻まれ、もう一度力を蓄え、ふたたび壁に挑み乗り越え、さらなる成長を遂げる。さまざまな変遷を辿り、その変遷が歴史をつくる。至極当たり前のことだ。

 つねに何かを目指して進むこの歴史は、すなわち現在がつねに何かの「ポスト/プレ」のうえに成り立っている。話を戻し湘南に限定すれば、フジタサッカークラブはプレ・ベルマーレ平塚、プレ・Jクラブといえるし、第一期上田政権でもある1999年以前はプレ・湘南ベルマーレ、そして現在はポスト・J1といえる(クラブの歴史についてここで詳しく触れるのは不可能なので、この大雑把に過ぎる割愛はご容赦ください)。

「ポスト・J1」にあたる2000年から今日までの約6年間は、歴史を俯瞰したとき、同時に「プレ・J1」と括ることができる。つまり試行錯誤を繰り返す現在の足跡が、未来の昇格への道標となることは言うまでもない。ポスト/プレ時代には当然、低迷や生みの苦しみ、試行錯誤といった混沌が必ず訪れる。そしてこの混沌が解けた瞬間、次への大いなる一歩を踏み出し、新たな歴史が刻まれていく。

 昨シーズンの第4クールに就任してからというもの、上田監督はさまざまなトライを続けてきた。具体的にいえばFW戸田賢良のDFへのコンバートや鈴木良和の右サイドバックでの起用、そして今シーズン入った佐藤悠介のボランチでの起用などが、これまでになかったチャレンジである。そして冒頭に記したシーズン中の補強もまた、同様のことがいえるだろう。

 しかし、ともすればシーズン中の補強は現有戦力のモチベーションの低下にも繋がりかねない。さらに結果がもたらされなければ、混沌は混沌のまま終ってしまう。この不安について、補強に伴う布陣の変更により最近スタメンの座を失った坂本紘司がチームに代わり、代弁する。

「昇格するために必要としていることだから補強は理に適っている。僕もこれまで1ゴールしかあげてないし、それでは見ている人も納得しないでしょう。原因は総て自分にある。いまはチームとして、プロとして、結果しか求めてない」

 幾度か書いているが、6月に梅田が浦和から移籍してまだ間もない頃、「試合に出てない選手も含めて、チームが目標に向けてもっとひとつになる必要がある」と話していたことがあり、その言葉が脳裏に焼きついて離れなかった。「みな仲がいい」と常々表現されるチームにおいて、「ひとつになる必要性」というフレーズに矛盾を感じたからだ。

「ひとつになること」は、言うは容易い。漠然と「昇格に向けて」といえば、誰もがひとつになっているといえるだろうし、毎シーズン掲げてきたことだ。だが梅田然り、加藤望や佐藤も日頃から口にするように、おなじ表現のなかにも差異や相対的温度差が生じていれば、出場するしないに関わらず、それはチームとしてひとつになっているとはいえない。

 それを否定したのが、前述の坂本の言葉だった。すなわち、加藤や佐藤が入ったシーズン当初、そして梅田が合流した夏場から較べても、チーム内での意識は着実に変ってきているといえるだろう。つまり補強がもたらしたものは単なる戦力の向上に留まらず、競争心を喚起し、あらためて目標を明確にし、チームをひとつにまとめる作用をも補完したのである。

 混沌を解くのは目標に向かって突き進む一貫した信念でしかない。その中心に、上田監督はいる。そして指揮官の信念のもとでチームがひとつになったいま、さらに湘南とともに歩む総ての人たちが昇格へ向けあらためて絆を固く結びなおすことが、「ひとつ」をより強大に、より強固にするのだと確信して止まない。そこにはもちろん、チームを取り巻く僕たちメディアも含まれている。

三順して互いに研究も進んでいる現状において、最後の土俵際で勝負を分けるのは個人技や戦術をも凌駕する人数分の信念にほかならない。「プレ・J1」の渦中で、湘南の混沌のなかに生まれつつある大きな潮流が、最終クールを席巻する。

Reported by 隈元大吾