Jユースカップ2008特集

展望・見どころ

本命は高円宮杯を制した浦和か、高いポテンシャルを秘めた柏か?
エル・ゴラッソ誌 川端暁彦氏が本大会の行方を占う

12月7日、Jユースカップの決勝トーナメントが開幕する。
Jリーグ誕生の翌年に産声をあげたJユースカップは当初、春のフェスティバルとして、新人戦のような位置付けで始まり、第2回大会から開催時期が冬季となった。
この大会は、それまで夏で引退するのが当たり前で、秋から冬にかけて公式戦の機会が「空白」だったJクラブ下部組織の選手にとって、貴重な実戦機会となった。1997年の第5回大会からは、非Jクラブ、いわゆる“街クラブ”にも門戸を開放。高校選手権が冬の高校王者を決めるのに対し、冬のクラブユースチャンピオンを決める大会として定着していった。
夏の全日本クラブユース選手権(U-18)、あるいは秋の高円宮杯全日本ユース(U-18)選手権で多くの3年生が引退するという慣例自体は長く残っていたが、近年は主力の3年生が残るチームが多数派だ。これはタイトルの権威が高まっていることの裏返しでもあるだろう。Jの各ユースクラブが歴史を積み重ね、有力選手が集まるようになったこともあって、大会のクオリティーは確実に向上している。
第16回大会は、Jの各クラブを7グループに分けたグループリーグ戦からスタート。7月13日から11月24日にかけて、長丁場のホーム&アウェイ総当たり戦で、決勝トーナメント進出14チームを決定した。この14チームに、各地域予選を勝ち抜いた街クラブの4チームを加えた計18チームがノックアウト方式で激突する。

では、今大会を占っていこう。
普通に考えれば、高円宮杯を圧倒的な強さで制した浦和ユースこそが優勝の本命だろう。負傷を抱える選手が多いのは気がかりだが、昇格の内定しているDF永田拓也、濱田水輝、MF山田直輝、高橋峻希、2種登録のFW原口元気の5人だけでなく、MF田仲智紀、DF菅井順平など攻守に豊富なタレントがそろう。戦術的柔軟性やバリエーションの多彩さも他の追随を許さない。初戦で当たる三菱養和SCを大の苦手としているのは気がかりだが、戦力的には栄冠を狙って当然のチームだろう。
ただ、近年のJユースカップでは、夏のクラブユース選手権や秋の高円宮杯で思うような結果を残せなかったクラブが躍進するケースが目立つ。昨年はクラブユース選手権のグループリーグで敗退し、高円宮杯は出場できなかったFC東京が優勝。準優勝も、夏に決勝トーナメントの1回戦で敗退し、高円宮杯には出場しなかった柏だった。一昨年の王者となった広島も、夏は1回戦敗退、高円宮杯では準々決勝で敗退している。同準優勝のFC東京は夏に準決勝で敗退し、高円宮杯には出場できなかったチームだった。

こうした視点で見ていくと、優勝の本命に推すべきは、柏ということになるかもしれない。
クラブユース選手権で準優勝、高円宮杯で16強という戦績は決して悪くない。ただ、彼らのポテンシャルと高い目的意識を思えば、不本意な成績だったことも事実だ。負け方も悔いの残るものだった。今大会への意気込みは強いだろう。予選リーグでは浦和と同居する形になったが、見事に2連勝。相手がベストオーダーでなかったとはいえ、質の高さを見せ付けた。DF島川俊郎が仙台、MF畑田真輝が甲府、そしてDF酒井宏樹、MF武富孝介、山崎正登、FW工藤壮人の4人はトップ昇格が内定している。また、FW指宿洋史とMF仙石廉の二人は海外クラブへの加入が噂される。もう一人、FW比嘉厚平という切り札もいる。今年の初頭にU-19日本代表の海外遠征で重傷を負ったが、本来は彼こそがこのチームのエース。出場できるかは微妙な情勢だが、「勝ち進めば進むほど一緒にプレーできる可能性は上がる」(吉田達磨監督)と、大きなモチベーションとなっている。徹底したポゼッションサッカーはJクラブの中でも異彩を放っており、一見の価値があるチームだ。

連覇したチームが過去に存在しないというデータを、あるいは夏に結果を残したチームは厳しいという近年の傾向を信じるなら、今大会のF東京は厳しいということになる。昨年のJユースカップ決勝、今年の関東クラブユース選手権決勝、クラブユース決勝と柏のタイトル獲得を阻んできた“柏キラー”だけに、対決を見てみたい気持ちはあるが、組み合わせはなかなかハードだ。過去の傾向を信じるなら、横浜FMユースや京都U-18、清水ユースといったチームは、攻撃陣に大会全体でも上位のタレントを擁しているだけに、躍進の可能性がある。

このほかでは、昇格内定のMF宇佐美貴史ら技巧派揃いのG大阪ユースは当然ながら優勝候補の一角を担うべきチーム。高円宮杯準優勝の名古屋U-18はFWアルベス・デリキ・タケオの調子次第か。広島は今季、結果が出ていないが、選手がいないわけではない。トップに合流していてユースでコンスタントに試合出場していなかったGK原裕太郎が本格的に参戦しているのは心強い要素だ。また高円宮杯で柏を食った東京Vユースは、浦和を食う潜在能力を秘めたチームだが、エースストライカー真野亮二の出場停止が痛い。鹿島はFW藪裕史朗、MF島田譲、土居聖真など個性のある選手がいるだけに、CBの藤井航大中心のディフェンスがどこまで粘れるかがカギとなる。大宮はNACKで行われる準々決勝を目指したいところで、昇格内定のMF新井涼平の奮起が期待される。

街クラブ勢は多くの3年生を欠いているので厳しい戦いになりそうだが、三菱養和SCはDF三沢祥馬、MF田中輝希、加藤大などJクラブに匹敵する強力な陣容を誇る。アミーゴス鹿児島も数人しか3年生は残っていないが、1年生のときから活躍するMF中村剣史郎を軸に、G大阪相手の番狂わせを狙う。
大会全体のダークホースとしては、昇格内定のMF丸橋祐介、山口螢ら好素材が目白押しのC大阪を推したい。高円宮杯では攻守の歯車が噛み合っていない印象もあり、初戦で当たる千葉はDF中村祥太砂森和也、FW高橋完治など楽しみな選手を多数擁する好チームだ。しかし、南津守から長居へと、常にホームグラウンドで戦えるアドバンテージは大きい。ユースを支援するサポーターの“温度”の高さも素晴らしく、彼らの支援を背に受け栄冠を手にしたとしても、何ら不思議はないだろう。

以上

2008.12.02 Reported by 川端暁彦(エル・ゴラッソ