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ついに始まった2009Jユースサンスタートニックカップ決勝トーナメント。今回は指導者インタビューと題し、ジュビロ磐田ユースを率いて2年ぶりの決勝トーナメント進出を果たした吉田光範監督にお話をうかがいました。選手としてもジュビロ磐田でプレーし、日本代表としてはいわゆる『ドーハの悲劇』の瞬間にピッチに立っていたことでも知られる吉田監督に、今大会へ向けての展望、そして育成にまつわるお話を語っていただきました。
■気になる監督がいるのは、広島、横浜FM、東京V



- Q:ひとりのサッカーマンとして今年のJユースサンスタートニックカップで注目するチームや選手はありますか?
- 「タレントがいると思うのは、横浜FM、G大阪、名古屋、広島、東京Vあたりですね。育成の歴史があるチームが中心ですが、ユースからトップチームに多くの選手を上げているチームは魅力を感じます。選手の個人名は挙げにくいですが、G大阪はジュニアユースの年代から育成をされているし、関西のトップクラスの選手の多くがG大阪の下部組織に入っているのでクオリティは高いと思います」
- Q:気になる監督はいますか?
- 「広島(森山佳郎監督)、横浜FM(松橋力蔵監督)、東京V(冨樫剛一監督)ですかね。決勝トーナメントのヤマとしてはG大阪、横浜FMのヤマは面白いと思う。広島、東京Vのヤマも面白いと思いますよ、川崎Fもいいチームだし」
- Q:静岡県からは磐田とHonda FCの2チームが出場しますが、近年の静岡のレベルに対してどんな印象を持っていますか?
- 「県内で選抜チームを作れば質は高いと思いますが、各チームに分散すれば名波浩、高原直泰(浦和)、中山雅史のようなレベルの選手はなかなか出てこない。Jリーグの発足以来、周囲のレベルが上がったことが一番の理由だと思います」
- Q:今年1年の磐田ユースを振り返ってどんなことを感じていますか?
- 「ユースの監督になって3年目なので3年生は1年の頃から見ている選手なんです。彼らにはサッカーというゲームをどう考えていくのかという話をしてきました。このチームを巣立ってからいろいろなタイプのチームでプレーするときに役立つように、相手チームの守備と攻撃の意図を汲み取ってどう攻略するのかを考えられるような環境を作ってきました。今年の高円宮杯(全日本ユース)の決勝(対横浜FMユース・1-7)はやられたが、いろいろなスタイルのチームと対戦してそれなりに選手は考えながらプレー出来たと思う」
- Q:プロで通用する選手の育成が大前提だと思いますが、そのためには判断力を育てることが重要だと考えているということですか?
- 「最終的に高円宮杯の決勝で畳まれたのは技術の差もあったと思う。判断力も上げないといけないが、そこに関わる技術を上げていかないとリンクしていかないことを感じました」
- Q:静岡の選手は、「技術力が高い選手」というイメージがありますが、それでも足りないということですか?
- 「まだ足りないですね」
■日本人が世界と戦うために



- Q:「日本人が世界と戦うため」ということは意識の中に大きくありますか?
- 「ありますね。私が代表チームの一員としてヨーロッパで戦ったときに技術の差は間違いなく感じた。フィジカル的なスピードでは追いつけないこともあるが、全てのコーディネーションにおけるボールの扱い方を上げて、日本人にしか出来ない緻密なポジショニング、変化を上げていかないと世界では戦えないと思う。個人的にはもっと下の年代から育成に関わりたいと思うくらい。もっとしっかりとした基本技術がないとこの先は厳しいと思う」
- Q:日本国内のサッカーは世界で戦うためのサッカーになっていないですか?
- 「考え方や仕組みなど、いろいろと在り方を変えていかないといけない所はあると思う。例えば、U-17日本代表などのユース年代のチームにオシムやオフトのように経験豊富な外国人の監督を起用することを考えてもいいと思う。彼らがどんな選手をどんな視点で選び、どんな組み合わせをするのか見てみたい。ヨーロッパでは同じ監督が長くU-17の監督を務めている例があって、そのなかで代表の考え方、プレーを指導している。そうしないとなかなか根本的なものが変わらないと思う」
- Q:国内のゲームなら足元でボールを止めても奪われないような距離でも、ヨーロッパやアフリカの選手が相手だと奪われ、逆に奪えるボールだと思っても向こうはファーストタッチでボールを大きく動かすから奪えないことがあります。磐田ユースではどうやって世界を意識する指導を行っているのですか?
- 「ユースの場合、大学生とゲームをやっています。大学もチームによってスタイルが違う。いろいろな個性があるチームと対戦して、ボール移動の駆け引きを経験していくなかでプレーディスタンスを確立していかないとトレーニングがただのドリルになってしまうと考えています。ドリルで終われば判断力が身につかない。スピードや強さが違う相手と対戦することが大事。そして、簡単には身につかないから繰り返しやるしかない」
■僕らは光を追いかけていかないといけないと思う



- Q:Jリーグのユースチームには、JFAプリンスリーグ、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯全日本ユース(U-18)、Jユースサンスタートニックカップと大きな大会が4つあります。それぞれの大会ごとに目標の置き方は違いますか?
- 「磐田の場合、Jユースカップの予選では、ホームゲームはなるべく3年生を使って、アウェーは1,2年生を使って経験値を上げたい。アウェーは学年上の相手になるが、そのなかで何が出来て何が出来ないか知ることが大事だし、移動してプレーする経験の重要性をクラブが理解してくれている。いつもはアウェーで1,2年生のチームが勝てなかったが、今年は久しぶりに予選を抜けた」
- Q:そういう戦い方はクラブの理解も必要ですね。そういう戦いをする理由は他にもありますか?
- 「クラブとは話をしているので、『何がなんでも勝て』と強制されることはなかったですね。翌年の新チームでプリンスリーグを勝ち抜いて高円宮杯に出場することは重要なので、プリンスリーグまでの時間を上手く使うことも重要なんです。負けることはよくないが、何が出来て何が出来ないかを明確にすることは重要だし、アウェーの経験を積むことも重要です」
- Q:高円宮杯は決勝で敗れましたが、どんなことを感じ、どんな話を選手に話しましたか?
- 「広島相手にPKで何とか勝って決勝に進んで、少しは落ち着くかと思ったが、決勝は過緊張があった。慣れていないんですね。選手には、『はっきり言うと、力がないことが分かったでしょ』という話をした。今年の3年生からトップチームに昇格する選手がいないので、大学の4年間のいい宿題を貰ったし、プロになるためのモチベーションを貰えた。決勝でのミスをどう受け止めるのかという話をしました」
- Q:磐田もユース出身の選手がトップで活躍していますが、今の彼らを見て逆算して思うことはありますか?
- 「例えば、山本康裕を高校1年生のときに見て、『プロになれる』とは思わなかった。しかし、高校2年になって判断力と技術が上がってきた。フィジカルの強さは持っていたので、上手く融合したのだと思う。トップチームの監督だったアジウソン(2006年6月〜2007年9月)が『(トップで)山本を使う』と言ってくれた事も大きいと思う。南米出身の監督は、いいと思うと(抜擢する)リスクを捨てて怖がらずに選手を使い切る。その結果に対する是非は別として、こういう決断力は日本人監督にはない。日本人監督は『これが出来ないとトップに上げない』ということを優先する。僕は、いいものを確実に発揮できるようにしてあげたいと思っています。
僕が現役のときはサッカーで『ああしろ、こうしろ』と言われたことはなく、悪い部分は周りの選手がカバーしてくれた。いい部分は光らせてくれた。その中で自分でもカバーしてもらっている自覚があったから、その点は努力した。僕らは光を追いかけていかないといけないと思う。山本はもっと大胆にアグレッシブにプレーする選手だけど、あの年代でもチーム優先になるところがある。彼だけでなく、最近の日本サッカーにはこのイメージが強い。どこかでリスクを引き摺りながら攻撃をしている感じがある。だからスピードが落ちる」
■状況を判断するのは、ピッチの上の選手たち



- Q:今年のJユースサンスタートニックカップはどう戦いますか?
- 「12月11日まで2年生が修学旅行なんですよ。13日の初戦(2回戦)は3年生中心になると思います」
- Q:それは厳しいですね。書いてもいいですか?
- 「どっちでもいいですよ」
- Q:京都とアミーゴス鹿児島U-18の勝者と対戦しますが、スカウティングをする予定はありますか?
- 「相手の分析は全くしないんです(笑)。相手が3-5-2か4-4-2かも分からない状態でゲームをします。指示は殆どしないんです」
- Q:選手には先発メンバーとシステム以外には何を話すんですか?
- 「相手がゾーンならどうするかという話を少しする程度です」
- Q:ピッチの上で自分たちで状況判断をして決断するということですね。
- 「そうなんです」
- Q:判断力を鍛えるためにリスクを負った育成のやり方ということだと思うんですが、これもクラブの理解がないと出来ないですね。
- 「そうなんですよ(笑)。何とか結果を出してステージを上がって行かないと強いチームとも対戦出来ないし、強烈な緊張感も味わえないですから難しいですね」
- Q:Jユースサンスタートニックカップでは磐田の選手がどんな判断をしてプレーをするのか楽しみにしています。ありがとうございました。
以上
取材日:11月26日
取材・構成:松尾潤
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プロフィール:吉田光範
刈谷工業高校→ヤマハ発動機(現・ジュビロ磐田)。日本代表では国際Aマッチ35試合出場、2得点。アメリカワールドカップのアジア予選ではドーハの悲劇(1993年10月)をピッチで味わった(右サイドハーフ)。1995年に現役引退、引退後はホームタウンの巡回コーチに就任し、大学生からジュニア年代まで幅広い年代を指導。他に、分析担当スカウト、トップチームのコーチ、ユースチームのコーチを経て現在ユース監督3年目。
