J2参入を宣言してから3年を掛けてJFLを卒業。ようやく悲願だったJ2の舞台に立つことができる。
メインテーマはJリーグ参入初年度をいかに戦うか。
今季から指揮を執る松田浩監督は、キャンプを通じて個に依存しない組織的なゾーンディフェンの徹底を図り、大崩れしないチーム構築に着手。当初はうまく事が運ばなかったが、時間が経つに連れて修正がなされ、戦術は浸透していった。相互理解を深めるにはもってこいのキャンプという特別な環境に加えて、選手たちが指揮官の考えを積極的に吸収しようとする姿勢が理解度を促進した。
その成果は、キャンプの総仕上げとして行われた2月5日のヴァンフォーレ甲府との練習試合(30分×3本・0−0)で見られた。序盤から劣勢に立たされるも、最終ラインが整い始めると盛り返し、五分に渡り合えた。苦しい展開を耐えしのげたのは、取り組んできた守備戦術に対する揺るぎない自信があったからにほかならない。今季の目標を「9位以内」に定めた栃木SCにとって、昨季7位の甲府を無失点に抑えられたことは大きな収穫だった。
しかし、充実したキャンプを過ごして臨んだ水戸ホーリーホック(昨季11位)との「北関東ダービー」前哨戦(2月14日)は0−4と惨敗に終わる。先手を取られたことでトーンダウンし、気持ちを立て直せずにミスから失点を重ねた。集団として戦うために欠かせない「ディシプリン」が乱れ、「ハードワーク」を怠れば、たちまち崩壊へと繋がることを教えられた。「隙を作ってはいけない」と松田監督は皆が同じ方向を向かなければ敗戦は必至であることを指摘した。
ただ、“若いチーム”が成長するには痛い経験が不可欠。高い授業料を払っていい勉強をさせてもらったのだから、今後に活かさない手はない。甲府戦で得た守備への確かな手応えと水戸戦で浮き彫りとなったメンタル面の課題。開幕前にチームの「二面性」が見られたことの意味は小さくない。顕在化した問題点は改善していけばいいのだから。
今季は、クラブが新たに打ち出した「5年でJ1」という目標に向けて第一歩を踏み出す年でもある。ベース作りに時間を費やすことで思うような結果が残せず、我慢を強いられる試合が続くこともあるだろう。例えばJFL初年度(2000年)に喫した11連敗のような苦しみを味わうことになるかもしれない。重要なのは気持ちを切らさずに、選手・ファン・サポーターが辛抱強く戦うこと。それは、J1昇格を目論む他のクラブに一泡吹かせるために必要な条件でもある。
厳しい戦いが予想されるが、チャレンジ精神を忘れることなく、失うものがない精神的なアドバンテージを活かし、いやらしいチームとして「台風の目」となりたい。
【注目の新戦力】----------
●MF 8 栗原圭介
前所属の神戸でも共に戦っただけに松田監督のサッカーを知り尽くしており、副キャプテンとして戦術浸透に尽力する姿は、まさに“ピッチの指揮官”と呼ぶに相応しい。豊富な運動量を活かしたプレーのみならず、コミュニケーションを図りながら言葉でチームを牽引できる貴重な存在。ユーティリティープレーヤーとして、左右のサイド以外にも、守備的なポジションを除けばどこでもこなせるのも強みである。チーム最年長のベテランは若手に経験を還元しつつ、今季も貪欲に自身の成長を望む。★栗原圭介選手を前クラブJ's GOAL担当ライターがご紹介!≫[ ニューカマー・レコメンド ]
●FW 20 河原和寿
各年代の日本代表を経験。将来を嘱望されている逸材は、出場機会を求めてアルビレックス新潟から栃木SCへの期限付き移籍を決意した。DFの背後を突くプレーに長けており、鋭い飛び出しからゴールに迫る。心配なのは練習試合でシュートをほとんど打っておらず、持ち味を活かし切れていないこと。自らのタイミングでボールを引き出すだけでなく、味方のパスに合わせることができれば、一皮むけることは本人が一番理解している。周囲との連係を深めることで課題を克服し、期待されているゴールを量産したい。●DF 25 工藤祐生
静岡キャンプに練習生として参加。意欲的にランニングから先頭を走り、ハイボールへの強さ、足元の確かな技術など持ち味を発揮し、積極的に自分を売り込んだ。猛烈なアピールが実り、見事に契約を勝ち取った。松田浩監督は層の薄かったセンターバックを探し続けていたことから、今後が楽しみな素材が見つかったことに胸を撫で下ろしていることだろう。現時点ではバックアッパーが濃厚だが、「試合に出なければ意味がない」と本人が語るように先発の座を狙う。【開幕時の予想布陣】----------
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前に起点を設けるために、佐藤悠介をトップ下に据えた4‐2‐3‐1にトライし好感触を得ているが、チーム戦術を具現化するには中盤をフラットにした4‐4‐2が最適だろう。
ゴールマウスを守るのは絶対的な守護神・小針清允で間違いない。今季も俊敏な反応で数々の窮地を救ってくれるはず。しかし、長丁場のJ2では昨季のようにフルタイム出場は難しく、一人で守り切るには限界がある。武田博行と柴崎邦博は小針を脅かす存在に成長しなければならない。
センターバックを組むのは大久保裕樹と川上典洋。二人とも若いものの大久保は最終ラインのコントロールが巧みで、川上は球際の強さと叫びながら繰り出すヘディングで、相手エースの潰し役に徹する。左右のサイドバックは経験値が高いだけに計算が成り立つ。右の岡田佑樹のオーバーラップは攻撃に厚みを加え、沈着冷静な井上雄幾はボールを落ち着かせることでリズムを変えられる。しっかりと後方からビルドアップすることで、攻撃が単調になることを防げるのは昨季との相違点である。
中盤は経験豊富な面子が揃った。一方で、年齢の高さとスピード不足は気掛かり。4人(佐藤悠介、米山篤志、落合正幸、栗原圭介)だけで51試合を乗り切るのは困難で、求められるのは入江利和、伊藤淳嗣、鴨志田誉、本橋卓巳、高安亮介、向慎一とバックアッパーの充実である。定位置を奪い取るという気概を持ち、競争原理を働かせて欲しい。
空中戦の強さと堅実なポストプレーに加えて、前線からのチェイスも厭わない若林学、背後を突く動き出しに優れた河原和寿が2トップとして有力。だが、松田浩監督はその時その時で調子のいい選手を起用することを明言している。万能型の松田正俊、スピード系の稲葉久人、華麗さと泥臭さが同居する石舘靖樹が取って替わる可能性も十分にあり得る。昨季はFWのゴール数があまりにも少なかったことに寂しさを覚えた。今季の目標である中位に食い込むために、軸となる選手には2桁ゴールが望まれる。
以上
2009.2.18 Reported by 大塚秀毅
| 2008成績 | |
| JFL | 2位 |
| 天皇杯 | 4回戦敗退 |
| 栃木 移籍情報 | |
