【2016シーズン開幕!特別原稿】ドラマティック!Jリーグ。優勝は予算では決まらない

2016年2月19日(金)

文:中野和也(サンフレッチェ広島 担当)

Jリーグはどんなクラブでも、優勝の夢を見ることができる。一方で、どんなクラブでも、降格の恐怖を味わうことになる。希望と絶望、夢と幻滅が交錯する世界でも希有なリーグだ。

現実に、G大阪や柏、そして浦和にFC東京も降格経験を持つ。一方で、広島のような予算的には平均レベルのクラブも優勝を果たし、平均以下の仙台も2012年には優勝争いに絡んだ。2014年にはJ2クラブも含めて20位前後の鳥栖が優勝したG大阪と勝点3差の5位に躍進した。

優勝も降格も、予算では決まらない。それがJリーグ最大の魅力である。

欧州では21世紀以降、ビッグクラブとそれ以外の「格差」があまりにも明確だ。プレミアリーグではマンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、チェルシー、アーセナルの4強。リーガ・エスパニョーラでは、バルセロナとレアル・マドリードの2強にバレンシアとアトレティコ・マドリードが絡んできた程度。セリエAは、ミランとインテル、ユベントスの3トップ。そしてブンデスリーガではバイエルンとドルトムントの2強以外ではシュツットガルトとブレーメン、ヴォルフスブルクが1度ずつ優勝したのみ。

一方のJ1は、21世紀以降8つのクラブが優勝を果たしており、鹿島の4度と広島の3度が目立ってはいるが、だからといってこの2クラブが常に優勝争いを演じているわけではない。今季のプレミアリーグにおけるレスターのような躍進は、J1では予想可能な範囲である。

そして広島こそ、このJリーグの混戦ぶりを象徴するクラブと言えるだろう。2度にわたる降格に、2度にわたる経営危機。特に2012年には「減資」という非常手段によって財務体質を改善しなければならないほどの厳しさ。その影響もあって広島のベースを築いたペトロヴィッチ監督と契約更新できなかった。チーム得点王の李忠成や鉄人・服部公太らも広島を去り、ペトロヴィッチ監督の後任が監督経験のない森保一だったこともあって、一部では「降格候補」にもあげられていた。そこで優勝の奇跡を演じても、主力選手の流出が止まらない。それでも、4年間で3度のリーグ制覇、クラブワールドカップ3位の実績を残せたことは、おとぎ話でもなんでもない。クラブ・チーム・選手の努力とサポーターの熱意が素晴らしい化学反応を起こした好例である。

もちろん、予算はあるに越したことはない。中国のクラブがカカやフェルナンド・トーレスを獲得しようとする話は、夢がある。J開幕の頃は、ジーコはもちろん、リネカーやリトバルスキー、ストイコビッチやストイチコフら世界のビッグネームたちが次々とやってきた。それはそれで、ワクワクしたものだ。

今のJには、その類いのときめきは少ない。だが、別の意味で心が躍る要素が存在する。世界でも希有といっていい、全てのクラブが「優勝を目指せる」という希望だ。夢だ。

「もっと足下を見た方がいい」とか「現実的な目標を」とか、したり顔で言う人もいる。広島に対してもよくそんな言葉を聞いたし、「叶いもしない夢を語るな」とも言われた。実際、森保監督に「今年の目標は?」と聞くと、「まずは(残留の目安である)勝点40」と答える。それは就任以来ずっと、変わらない。

だが、残留を果たすためにも、ACLにしても優勝にしても、まずは目先の1勝からスタートする。目の前の対戦相手に勝利するために戦略を巡らし、戦術を構築し、メンバーを選定し、コンディションを整える。その繰り返しによって残った戦果から、J1であれば、自然と「優勝」「ACL」「賞金圏内」「残留」と目標が変わってくる。その中で、広島や仙台、鳥栖のように、優勝争いに絡める中小クラブが出現する。まして、今は2シーズン制。17試合の短期決戦でステージ優勝が決まり、チャンピオンシップへの出場権を得ることができる。栄光への架け橋は、より近くなっている(2シーズン制の是非を語っているのではなく、現実の話として)。

欧州の各リーグで中小規模のクラブが「優勝」と言っても、確かに現実味はわかない。レスターは快進撃を続けているが、だからといって他のクラブが「僕らも優勝を」と言うには、まだ「混戦の歴史」が浅すぎる。J1は広島が優勝し、仙台はACLに出場し、鳥栖は優勝に絡んだのだ。優勝という夢は、決して途方もなく現実味が薄いわけではない。予算額が多い方が優勝には近いが、それだけでは決まらないことは、既に証明済みなのだ。

J1昇格即優勝の事例が2つ(2011年:柏、2014年:G大阪)もあるリーグである。昇格組も優勝を夢見ていい。ずっと中位に甘んじているクラブも、昨年は残留争いに巻き込まれたクラブだって、まずは優勝を目指そうではないか。もちろん、昨年は惜しくも優勝を逃したクラブは「今年こそ」と考えているだろう。広島は今季もまた、勝点40ラインの到達を第1ステップとして、そこから先を目指すために一戦必勝主義を揺るがせにしない。全てのクラブが優勝を目指すことができる。一方で降格の恐怖も、全クラブが共通認識として持っている。

J1だけではない。J2でも松本山雅の事例がある。昨年はプレーオフに愛媛が進出し、C大阪とつばぜり合いを演じた。J3ではJ会員になったばかりの山口が快進撃を見せて1年でJ2昇格を果たし、今季はJ1昇格へと熱い想いを語っている。一方で、J1経験クラブの大分がJ3に降格してしまった。カテゴリーが違っても、Jに夢と幻滅が存在することは変わらない。

さあ、明日のFUJI XEROX SUPER CUP 2016を皮切りにして、Jリーグが開幕する。サポーターという名の当事者でもいい。サッカーファンとして俯瞰して見てみるのもいい。今季もスリルとサスペンス、歓喜と悲嘆が交錯する世界を堪能しよう。ドラマティックとは、Jリーグのためにある言葉なのである。


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■FUJI XEROX SUPER CUP 2016
 サンフレッチェ広島 vs ガンバ大阪
 2016.2.20(土) 13:35 @日産ス

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