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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:A代表に脈動した“名古屋の血”。菅原由勢と藤井陽也の共闘はここから新たなフェーズへ

2024年1月4日(木)
良き仲間であり、切磋琢磨を繰り返すライバルでもある。元日にタイ代表との親善試合をおこなった日本代表がゴールラッシュを見せた後半、残り15分ほどのDFライン右サイドには名古屋の血が流れていた。U-12から名古屋グランパスでプレーしてきた藤井陽也、そして78分にピッチに入った菅原由勢はU-15から名古屋のアカデミー育ちである。同期のふたりはチームを牽引する主力としてU-18では1年次からプレー機会を得てきたが、「由勢はずっと自分たちの世代の中で一歩先を行く存在だった」と藤井が言うように、ここ4年ほどの彼らの間には進む菅原、追う藤井という構図があったこともまた確かだ。だからこそ2024年の幕開けにふたりがA代表のピッチで競演したことの意味は大きく、「由勢が先を走ってくれて、自分たちが負けないようにとか、そういう気持ちでいられたからここまで成長できたと思っている」という藤井の言葉には力がこもっていた。



前回、昨年3月の追加招集の際には出番がなかった藤井だったが、そのシーズンで見せたパフォーマンスはもはやJリーグの枠を超えていた。3バックの左右、中央のどこでも遜色なくプレーし、左右のポジションならば自陣ゴール前からグイグイとボールを運んでしまえる個人能力の高さを誇示。あまりのポテンシャルに余裕を持ちすぎているのではと心配する時期もあったが、名古屋の長谷川健太監督に聞けば「いやあ、陽也はもう抜けているよ。ヨーロッパに行く選手。だいたい見ていればわかるんだけどね」とその上の評価を与えていた。対人能力の高さ、空中戦の強さ、俊足と呼ばれるレベルのスピードも併せ持ち、ドリブルも、実はシュートも得意だ。今回のタイ代表戦では普段の3バックとのプレーエリアの違いに少しやりにくさがあったようだが、「ほんとにプレーしていて楽しかった」と言えるだけの手応えはあった。

もちろんすべてを出し切れと言うのは酷な話で、しかし期待はしてしまうもの。本人も言うように「攻めている時の後ろの守備のオーガナイズ」をはじめ、パス1本の質など課題は多く出た。菅原も短いプレー時間ながら「もっとしっかりやれよって言いましたよ」とあえて厳しい言葉をかけたという。「あいつの持っているポテンシャルはね、今日のパフォーマンスからは掛け離れているから」。追いついてきた同級生を助けるつもりはまったくなく、他のチームメイトと同じか、それ以上の高い要求をして奮起を促した。それはまさしく藤井の言う、「常に上の基準を見せてくれた、そういう選手だった」という“菅原由勢”そのものだ。アディショナルタイム含めて15分ほどの途中出場の中でもアシストを記録してみせた新たな日本の主力は、「常に僕はチャレンジャーだと思っているし、危機感はある」とそれでも自分が牽引車であることを認めず、常に飢えている。



目前に迫ったアジアカップの代表には菅原のみが選ばれ、藤井はまた追いかける立場になった。「もちろん由勢に負けたくないっていう気持ちもある。こういう舞台でお互いが成長し合って、もっともっと、日本の力になれたら」という想いはまた次の機会へ持ち越されたわけだが、その菅原はといえば「特にアジアカップは日本が最強っていうのを示さなきゃいけない。優勝します」とさらなる高い目標設定へ向かってモチベーションを燃やしていた。この頼もしき“追いかけっこ”が今後どのような展開を見せるのかは楽しみで仕方ない。「もっともっとやれると思うし、この試合の中でも成長できたのはすごく良かった」と次のフェーズへ移行した藤井と、「これからでしょ。これからですよ」と藤井との共演が序章に過ぎないと言った菅原。日本代表に彩りもたくましさも加える、“名古屋の血”に今後ますます目が離せない。


Reported by 今井雄一朗