オリンピック出場の行方が日本女子サッカーの未来を決める!
野田朱美・大竹奈美(元日本代表)、日々野真理(フリーアナウンサー)の「Offside Talk」
Part1:「アトランタ五輪の頃の盛り上がりを取り戻したい!」
Part3:「サポーターの応援が選手の力になる!キレイごとはいいから、泥臭いサッカーを見せて!」

Part2:「エース澤は中田英寿のような精神的支柱。小林と丸山はスーパーサブとして期待大」

日々野:アジア予選を前にして、女子サッカーの注目度はこれまでにないくらい高まってきていますね。準決勝では順当にいけば北朝鮮と当たりますから、みんなこの一戦に全てを賭けようとしています。
野田:グループリーグで戦うベトナムやタイは、Lリーグのチームでも余裕で勝てるレベルですからね。もしかすると、10点以上の差がつくかもしれない。ただ、その試合を見たお客さんに「女子サッカーってこんなレベルかよ」って思われるのは嫌ですね(苦笑)。
大竹:でも相手が弱いから、日本がすごくうまく見えるかもしれないですよ(笑)。この間の日本代表対シンガポール戦(ドイツワールドカップ1次予選)だって、あれだけ接戦になったから「シンガポールって強いのかな」って思う人が多いんですから。
野田:でも、女子の弱い国は引いて守ったりもしないでしょう(苦笑)。
大竹:日本は、それだけ実力差がかけ離れている相手と2試合やった後、北朝鮮と戦うことになるでしょう。プレッシャーや体の当たりも全然違うから、頭で分かっていてもすぐに反応できるかどうか。それがゲームのカギになりますね。
日々野:しかも中1日ですもんね。日程的にもかなりキツそうですね。そういえば、ここへきて上田監督は3-5-2システムから4-4-2システムに変更したみたいですけど。
大竹:いや、4-3-1-2ですね。
日々野:それは、やっぱり北朝鮮戦に向けての対策なんですか?
大竹:そうだと思いますよ。
野田:2トップに入るのは?
大竹:大谷(未央)とガン(荒川恵理子)じゃないかな。トップ下に澤(穂希)が入る形で。
野田:なるほど。では、ボランチの3枚は?
日々野:酒井(興恵)さん、宮本(ともみ)さん、山本(絵美)さんかな。
野田:川上(直子)は?
大竹:右サイドバックなんですよ。左サイドバックの最有力候補は誰だと思います?
野田:矢野(喬子)じゃないの?
大竹:すごい、よく分かりましたね。じゃあ、センターバックは分かりますか?
野田:うーん、誰だろ。
大竹:イソ(磯崎浩美)が真ん中なんですよ。で、左サイドに柳田(美幸)を置いてテストマッチをやったりもしたけど、北朝鮮を想定するとちょっと厳しいかもしれないですね。イソたちは攻撃の起点にはなれるけど、劣勢になった時に守りきれるかどうか。やっぱり強い相手には、しっかりフィードできる選手が最終ラインにいないとね。ハワイ(川上)もサイドバックの選手じゃないし、背も小さいし。やっぱり両サイドにはキッチリ守れる守備的な選手を置いた方が絶対にいいですよ。
日々野:なるほど、では、改めてスタメンを整理すると、どんな感じでしょう?
大竹:まだ確定ではないけど、GKは山郷(のぞみ)ですね。真ん中は下小鶴(綾=右)と磯崎(左)。

野田:大部(由美)が外れてるんだ。下小鶴ってよく知らないけど、どんな選手?

大竹:若手の成長株ですよ。高倉さんが教えている「スペランツァFC高槻」に所属しています。で、左が柳田か矢野、右が川上ですね。ボランチは真ん中に宮本、右に酒井、左に山本。で、トップ下に澤、2トップに荒川と大谷でしょうね。

日々野:私が代表合宿を取材に行った時は、澤さんがFWに入って4-3-3だったんですよ。上田監督は「宮本がキーになる」って言ってました。

野田:確かに宮本は、上田さんのお気に入りかもしれないね。

野田:上田監督は「クロスを上げられないように先に手を打とう」という布陣を採ろうとしてるんでしょう。でも私は大部の存在が気になるなあ。彼女は決してうまくないけど、ボールをはね返す力はすごいから。実際、北朝鮮はヘディングがメチャメチャ強いから、マークつくのも嫌になっちゃうくらいですよ。昔、中国を相手にして、すごく印象的だったことがあるんです。中国と北朝鮮ってそんなに体格が変わらないんですよ。で、CKの時、私と大部が向こうのエースに2枚でついたことがあった。私と大部ですよ。日本で一番ヘディングの強かった2人が競りに行ったの。そしたら、はるか上で「ドーン」と入れられた(苦笑)。ホントに行かれたら、そうなっちゃう。だから、ボールを上げられる前のケアも大事だけど、上げられた時のケアもきちんと考えないといけないんじゃないかな。
大竹:うーん、でも大部由美ちゃんはファウルが多いからね…。ホントに大事な試合でPKを取られたりするし、パスミスも多いから、ちょっと心配ですよね。上田監督にしても、女子サッカーを見始めて1年半しか経ってないから、まだ完全に女子選手の特性を見極め切れてないのかもしれない。メンタル面のケアなんか、女子は難しいし。山岸なんか、メンタルの問題を抜きにすれば、ものすごくヘディングは強いし、足元もいいし、能力高いと思うけど、何とかうまく使えないのかな。
日々野:でもやっぱりリーダーシップという面では大部さんはチームにとって大きな存在ですね。ピッチ内外でも常に回りの選手に声をかけてますよ。

J'S GOAL:基本戦術と主力選手については、だいたい分かりました。次に、各選手の注目すべき点を教えていただけますか?
日々野:私は山本絵美ちゃんのクロスボールがすごいと思うんですよ。あれはサッカー少年たちが見ても勉強になるんじゃないかな。相手の抜き方もうまいし。あと、彼女は練習が終わってもずっとボールで遊んだり、じっくり走り込んだり、イメージでいうとサッカー少年のような感じ。明るく元気いっぱいですよね。
野田:どっちかというと、攻撃の選手に注目してた方が分かりやすいよね。
日々野:澤さんはちょっと別格でしょうね。
野田:確かにね。
大竹:彼女にはホント、注目してほしいですね。男子でいう中田(英寿=ボローニャ)みたいな存在だから。澤以外の女子選手を男子の代表に例えることはできないんだけど、彼女だけは中田と同じような存在感とカリスマ性を持ってますね。普通に傍から見ても、中田は日本代表の精神的支柱だし、澤も女子代表にとって欠かせない存在ですよ。彼女は練習中や試合中にアメリカで経験してきたものを出すから、みんなが澤の成長ぶりを体で感じることもできるから。そういう選手が1人いることで、周りのレベルも上がってきますしね。それに代表歴も長い。中学生から女子代表にいるし、いろんな大会に出て、サッカー人生のかかるような試合でも戦っていますから、澤には特別な期待はありますね。
野田:彼女はアトランタ五輪も経験しているし、間違いなく大事な選手だね。私は永里(優季)もいいと思ってるの。試合に出てこないかなあ。今って、10代の選手がすごいじゃないですか。彼女は一番若いから(17歳)、期待できそうだよね。
大竹:桂里奈(丸山)はポイントポイントでプレーするのに適した選手ですよね。スタメンじゃなくて。後から出てくる方が活躍するというタイプ。
野田:U-23日本代表の高松(大樹=大分)みたいになれるんじゃないかな。
大竹:確かに途中から出て来たらチーム全体に元気を与える存在ですね。1試合フルでプレーすると精神的にキレることも多いから、やっぱり途中出場の方がいいですね。それから弥生(小林)ですけど、もしスタメンから外れているんであればスーパーサブ的に使ってほしい。彼女は運を持っている選手だし、確実にゴールの匂いを嗅げる選手だから。
野田:キャプテンは?
大竹:ゲームキャプテンが磯崎で、チームキャプテンは大部ですね。実際の試合ではどっちがやるんでしょうか。
野田:フィジカル面を考えたらイソだろうね。ラインを上げてウラを破られたら、大部のスピードでは追いつかないでしょう。
大竹:やっぱりトータルの能力を考えるとイソが一番でしょうね。1対1にも強いし、一緒にやっていた時も、彼女のしつこさには苦しみました。顔はすごくキレイな人なのに「顔面がつぶれても行く」みたいな感じ(笑)。そういうタフさを持ってる選手かな。ただ、イソと下小鶴のパス回しは、心配ですね。イソは足元がダメだし、下小鶴もあまり自信がないみたいだから。北朝鮮みたいな相手にプレッシャーをかけられたら、ディフェンスラインでボールを回している時に失点する可能性がありますよね。そういう意味で、私は「ディフェンスラインがちょっと厳しいかな」と思ってしまうんですよ。
日々野:上田監督は「センターバックは高さを重視している」というようなことを言っていましたよ。
大竹:イソの足元がもう少しよかったらいいんですけど。2人ともポジション取りとか体の向きとかに問題があるから、どうしても見ていて「危な〜い!」って思っちゃう。まあ、こっちはいろんなことを勝手に言ってますけどけど(苦笑)。実際、選手たちはすごく一生懸命練習してるし、気持ち的にも充実してるはずですよ。
日々野:今回、女子代表の強化合宿がすごく長いじゃないですか。2月、3月、4月と。かつてない期間をともに過ごしているっていう意味では、チームは1つになってるのかな。ただ、いかんせん、メンバーの入れ替わりが結構多いですけどね。2月の合宿も3週間やってたんですよ。そういうのは滅多にないでしょう。

大竹:海外遠征を含めて3週間というのは当たり前だったけど、国内だけの3週間はたぶん、初めてですね。

日々野:「これだけ集中できるのは大きい」って監督は満足そうでしたよ。練習中は監督はもちろんですが、選手も大きな声を出し合いながらやっている。ほぼ同じメンバーで昨年のワールドカップも含め、1年半やってきて、アテネオリンピック出場のためにチーム作りをしてきたと言っても過言ではないでしょう。

野田:上田監督の手腕も注目ですね。歴代の女子代表監督を見ても、女子の指導歴がないのは上田さんだけだから、それがどう影響するかと思って。

大竹:確かに、保さんの後の宮内さん、池田(司信=ガンバ大阪)さんにしても、代表監督をやる前に女子を指導していたんですよね。宮内さんはU-21代表監督をやった経験もあったから。上田さんが不利なのは、女子に全く関わってなかったうえ、指導期間も短い部分。やっぱり大変だと思いますよ。

日々野:女子のチームって難しい部分があるんですか?外から見ているとすごく仲がいいように見えますけど。
大竹:みんな仲はいいですよ。まあ、私はそういうことに無頓着な方だから、人の好き嫌いとはないし、分かんなかったけど(笑)。
野田:私たちの時は仲がよすぎて、逆に競争心がなくなってしまう傾向がありました。この間のU-23代表みたいな生存競争がなくなってしまうんですよね。女子はそこが難しいのかな。あまりに競争心を煽ると、いがみ合いになる可能性もあるし、チームが割れちゃったりもするからね。
日々野:年齢も10代の子から30代くらいまでいるから、そのへんも難しい部分なんでしょうか?
野田:年齢は関係ないですね。だいたい敬語は絶対使わないし。私と澤は9歳違うんだけど、ヘンな上下関係は全くなかったですよ。
大竹:私たちはそういうふうに努力しましたね。試合中に「野田さん」って言うと、野田さんに「アッケ(野田さんのニックネーム)の方が短いから、そう呼べ」って言われたことがありました。だから、私たちが上になった時も、下の子たちに「さんづけじゃなく、奈美って呼んで」と言ってましたね。実際の試合中も「そこ追いかけてよ」とこっちから指示も出してました。グランドを離れれば、常識的な範囲で上下関係はありましたけど、高校の部活動のような先輩後輩は全然なかったと思いますよ。いいサッカーをするために、みんな必死だったですからね。
日々野:そういう協調性があってこそ、「戦う集団」になるんでしょうね。あとはメリハリがあるというか。私も取材をしていて何度もお腹を抱えて笑わされたことがあります。でも、練習に対する姿勢は本当にすごくみんな真面目。やるときはやる!というチームの雰囲気がいい結果に結びつくといいですね。

Part3では女子代表ならではの見所や今後の女子サッカーを盛り上げるためには?などについて語っていただきます。

野田 朱美(Akemi NODA)

女子サッカー史上に輝く名選手。1984年読売サッカークラブ"BELEZA"入団。同じ年に中学3年生にして女子サッカー日本代表入り。1990年〜1994年ベレーザのLリーグ4連覇に大きく貢献し、MVP、得点王、ベストイレブンにも輝く。1995年第2回女子ワールドカップ(スウェーデン)において日本人初のゴールを決め、ベスト8入りを果たす。数々の国際大会を経験し、1996年アトランタオリンピックにキャプテンとして出場。オリンピック終了後、現役を引退。その後、解説者としてテレビ、雑誌などで活躍中。
大竹 奈美(Nami OTAKE)

双子の美人姉妹として、姉:由美と共に読売ベレーザに入団。全日本選手権4連覇、Lリーグ3連覇と数々のタイトル獲得に貢献。Lリーグでは100得点第一号を記録する。また日本代表としても国際Aマッチに通算45試合出場し、32得点という成績を残す。1995年ワールドカップ(スウェーデン)ではベスト8入り、1996年アトランタオリンピック出場、そして1999年ワールドカップ(アメリカ)では日本代表で唯一のゴールをあげる。2001年7月現役を引退。引退後プロのコーチとしてサッカークリニックや女子チームで後輩の指導に関わりながら、試合の解説、スポーツ番組のゲスト出演、コラム執筆などの活動をし、女子サッカーの発展やスポーツの普及に注力している。
日々野 真理(Mari HIBINO)

Jリーグの中継を始め、サッカー中継のベンチリポーター、スカイパーフェクトTV!のサッカー番組、雑誌等での執筆、インタビュアーとして活躍中。女子サッカーに関しては、ワールドカッププレーオフvsメキシコ戦の中継を担当。昨年の女子ワールドカップではTBSのインタビュアーとしてアメリカへ。女子代表やLリーグなどの女子サッカーに関する記事をサッカーマガジン、サッカーaiなどに多数掲載。



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