【新潟 vs G大阪】 ウォーミングアップコラム:愉楽を知り、厳しさを知る男

2016年5月7日(土)

「ウォーミングアップコラム」は、試合に向けてのワクワク感を高める新企画。ホームクラブの担当ライターが、いろんな視点から、いろんなテイストでみなさんに情報をお届けします!
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2月のタイキャンプの、ある練習終わりのことである。試合ではどんなピンチにも表情一つ変えず戦い続ける胆力の持ち主、21歳の小泉慶が、絶叫しながらひざからピッチに崩れ落ちた。「ヤマ君、完璧じゃないっすか!? こんなの絶対、勝てないっすよ!!」。その隣で、ヤマ君こと山崎亮平が満面の笑みで立っていた。

ペナルティー・エリア外からインサイドキックで、どれだけゴールラインにボールを近づけられるか。その勝負の最初のひと蹴り目で、先攻の山崎がゴールライン真上にピタリと止めたのだった。勝者・山崎は、その後チームが宿泊するホテルのラウンジで、小泉にコーヒーを1杯ごちそうになったという(ホテルの敷地内にはコーヒー農園があり、自前ブランドのコーヒーは選手たちにもなかなかの人気だった)。

あるいは最近の練習後。広島から期限付きで加入した野津田岳人と、ボールを蹴り合いながらたわむれていたのだが、いつの間にか“利き足とは逆のアウトサイドキックでどこまできつい回転を掛けて相手の足下にパスできるか”という競争になっていた。練習後にじゃれ合ってることが多いよね、と話しを振ると、「ああいうの、けっこう大事なんですよ。去年はできなかったけど」とニヤリ。去年までは居残り練習は基本的にNG。集中した練習後の息抜きタイムもなかったのだ。

そのプレーは、サッカーを心から愉(たの)しむマインドにあふれている。公式戦の真剣勝負であっても、それが失われないところが山崎流である。

たとえば去年の万博のG大阪戦(1st第7節)。得意のドリブルでペナルティー・エリア内まで鋭く仕掛けると、切り返しに次ぐ切り返しでDFはおろか、日本代表GK東口順昭までも尻もちをつかせておきながら、軽く蹴り込めばいいところをゴールまで数メートルのところからフルパワーで右足を振り抜き、クロスバー直撃でゴールならずという、ユニークというか、“らしい”シュートミスもあった。

そんなサッカーの愉楽を知る男は、サッカーに対する厳しさ、ストイックさを持ち合わせてもいる。昨シーズンの新潟は最後まで苦しみながらもJ1残留を果たした一方で、ナビスコカップではクラブ史上初めてベスト4に勝ち上がった。G大阪に先勝しながら万博で敗れ、ファイナルに進めなかったものの、大きな到達点だと受け止める向きは多かった。

しかしシーズンを振り返るインタビューで山崎は、ベスト4という結果をほぼ全否定したのだ。「今年のナビスコで優勝したのが鹿島だというのは、この先もみんな覚えているし、その相手がガンバだったことも覚えていると思う。でも新潟が準決勝まで進んだことは、誰も覚えていないのではないか。ベスト4で満足しているわけにはいかないです」。ピッチを離れると温厚な性格だけに、このときの厳しさと熱さは、意外なほどだった。

前節、鹿島戦のミックスゾーンでも、そんな熱気を垣間見せた。一度は追いつきながら鹿島に競り負け、チームはとうとうリーグ戦5試合未勝利。浮上のきっかけをつかむためには、何かを変えなければならない。だが、それは何なのか? 目指すサッカーをやり続けることも大事が、ここまでズルズル来ているのも、また事実なのだ。

力のこもった声で、山崎は答えた。「新しいチームがスタートして3カ月。自分たちは戻るべき場所を作っている段階で、今は何かを大きく変えるのではなく、続けることが大事になる。チームとしてやり続けながら、今の流れを変えるには、個人のところが変わらないといけない。一人一人があらためて自分のプレーを見直して、どう良くするか考え、意識してトレーニングに臨まないといけない」

選手全員が、その姿勢を持たなければならないのは言うまでもない。『試合に出ているから』、『出ていないから』ということを誰かが言い訳にしているうちは、自分たちはレベルアップできない。きっぱり言い切る厳しさと強さを持つ男は、サッカーの本質であるプレーする喜びとともに、チームをけん引していく。

文:大中祐二(新潟担当)


明治安田生命J1リーグ 1st 第11節
5月8日(日)16:00KO デンカS
アルビレックス新潟 vs ガンバ大阪
デンカビッグスワンスタジアム(アルビレックス新潟)
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