【広島 vs 大宮】 ウォーミングアップコラム:脳震盪から順調に回復した柏好文。圧倒的な闘志を全面に押しだし、決戦に挑む。

2017年6月24日(土)



等々力に衝撃が走った。前半17分のことだ。
川崎FのFK。中村憲剛が横にチョンと出し、大島僚太が強烈なミドルシュートを打ちこむ。ブロックしようと身体を張ったのは、広島の闘将・柏好文(写真)だ。彼はどんな時でも、絶対に逃げない。大島の唸りを上げる剛球に対して真っ正面から挑んだ。その結果、ボールは彼のアゴからこめかみ部分を直撃する。
ボクシングでもこの部位にハードパンチがヒットすれば、KOの確率は高い。柏は倒れ、そのまま動けなくなった。広島の選手だけでなく、中村など川崎Fの選手たちも集まり、大きなジェスチャーでドクターを呼ぶ。まず気道を確保し、窒息しないような工夫も。両チームの選手たちの素速い判断と対応が、このアクシデントが大きな事故になることを未然に防いだと言っていい。
柏はそのまま交代。吐き気を訴え救急車で搬送された。試合後、その事実が森保一監督の口から発せられた時、記者会見室に駆けつけたジャーナリストからどよめきが起きる。

「大丈夫か」
「危険な状態なのか」

一瞬、2011年に水本裕貴を襲った「頭蓋骨骨折・硬膜外血腫」という大怪我が脳裏をよぎった。こめかみにダメージ、吐き気、救急車搬送。肘の打撃か強烈なボールかの違いはあっても、状況がダブる。あの時、水本は緊急手術を受けて一命を取り留めたが、処置が少しでも遅れていれば、彼は生きてはいなかった。
もしかしたら。「軽度の脳震盪」という診断がチームから伝えられるまで、不安は消えなかった。

ただ、脳震盪という言葉には「軽傷」というイメージがついてまわるが、実際にはそうではない。一時的な脳の機能障害ということで症状は自然と回復し、後遺症は残らないと言われているが、頭痛やめまいが残っている状態でもし2度目の衝撃が加わった時、「セカンドインパクト症候群」と呼ばれる脳に対する致命的な損傷を与える危険性もある。最悪、死に至ることも、深刻な後遺症が残る場合だってあるのだ。
そのため、日本サッカー協会では脳震盪と診断された選手に対して明確な復帰プログラムを定めている。六つのステージが設定され、各ステージに対して最低1日が費やされることになっており、選手はそのプログラムを着実に実行しなければ試合への復帰できない。もし、そこで難しい状況が生まれれば医師の診断を受け、指導にしたがって休息(ステージ1)のところから再スタートする必要がある。
つまり、全く問題がない場合でも、競技復帰となるステージ6に到達するまでは5日間の各段階を踏まえなればならない。それは、選手の健康やこれからの人生に対しての安全を考慮したうえでの指針である(日本サッカー協会が定める脳震盪に対する指針については、こちらのサイトを参照してほしい)

柏ももちろん、このプログラムに沿って回復を心がけ、各ステージの階段を昇った。そして川崎F戦から6日目を数えた23日、彼は紅白戦のピッチに立ち、強烈なシュートを放ってゴールネットに突き刺した。それは、闘将・柏好文復活への狼煙だ。
17位と降格圏に低迷する広島にあって、常にギラギラとした闘志を全開にしてゲームに挑む柏の存在は、サポーターの希望。開幕戦で足を負傷して離脱。先発復帰する仙台戦までの6試合で広島は1勝5敗と低迷した事実が柏の存在の重さを立証している。しかも、この6試合の得点はわずかに2点。彼が先発復帰した後は負傷交代した川崎F戦を除く7試合で9得点、戦績も1勝3分3敗。決して劇的によくなったとは言えないが、違いは明白。しかも、この9得点中、柏は6得点に絡んでいる。いかに彼の存在が重要だったか。もし、チャンスをつくり続けた川崎F戦で彼が90分プレーしていたら。そう考えると胸が痛い。

「この状態から這い上がるには、まず戦うこと。相手を上回る闘争心、ギラつきをアグレッシブに出して行くこと。消極的な姿勢がミスを生む。優勝争いしている時は、そういう野心は自然と持てるものだけど、この苦しい状況でもなお、闘争心を前面に押し出せるか。ピッチに立つ以上、そこを失ってはいけない」
柏好文が言うのであれば、納得できる。柏好文の言葉を自分の問題として選手たちが捉えてくれれば、広島の希望が見えてくる。
いずれにしても、彼の状態が深刻なものにならず、本当によかった。治療・回復に尽力したメディカル関係者はもちろん、迅速な対応を行った審判団や川崎F・広島両チームの選手たちにも感謝したい。

文:中野和也(広島担当)


明治安田生命J1リーグ 第16節
6月25日(日)18:30KO Eスタ
サンフレッチェ広島 vs 大宮アルディージャ
エディオンスタジアム広島(サンフレッチェ広島)
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