【秋田 vs 福島】 ウォーミングアップコラム:大卒ルーキーCBの千田海人、何かと縁のある福島戦で「負けたくない」

2017年11月18日(土)



「『ピーマンの肉詰め』を外で食べたいと思っても、なかなか食べられないですよね。そういう家庭料理が好きなので、自分で料理しています」

ゆったりと落ち着いた口調で話すのは、神奈川大学サッカー部出身のルーキー・千田海人(写真)。毎日料理をしていて、最近では3食自分でつくることもある。小学生の頃、姉弟で母親のおせち料理づくりを手伝ったことがきっかけになったという。「それで(料理が)しっくりきて、けっこう楽しんでいます。外で食べると野菜も少しですし、偏っちゃいますよね。自分でつくれば安く済むし、栄養も取れるし、何より自分が好きなものを食べたいですから」

千田の料理好きな一面に触れたところで、話をサッカーに戻そう。

今シーズン、ベンチ入りはするが出場機会が得られなかった千田がプロ初出場を果たしたのは、第14節の相模原戦。試合終了間際、相手のパワープレーに対抗するための投入だった。

「今年の初めに膝を負傷して、痛かったり痛くなかったりでずっと引きずっていて、コンディションがなかなか上がりませんでした」と開幕以降を振り返る。

その後、約1ヶ月のリーグ中断期間を経て、第28節の北九州戦で3バックの右CBで初スタメンと初フル出場を果たし、1-0の勝利に貢献する。それまでの5試合で勝ち星から遠ざかっていたチームにとって、大きな1勝となったこの試合で、千田は相手のクロスやロングボールを次々とはね返し、自らの「強み」を証明してみせた。

千田の強みとは、大学時代に培った守備だ。

神奈川大学サッカー部は、ハードワークによる堅守を信条とする。「守備に関しては大学でかなり成長したと思っていて。大学3年のときに、秋田商業出身の長谷川大さんが監督になられてから『まず守備だ』と。攻撃の選手から愚痴が漏れるくらい守備の練習が多くて、そこで僕はかなり鍛えられて、レベルアップしたと思っています」

秋田商業時代の下田光平も指導を受けたという長谷川監督には、千田も好影響を受けているようだ。

「大さんからは『他が下手でもいいから、何かひとつ飛び抜けているものがある選手が上で活躍できる』と言われていて。僕もなにかひとつ、これだけは負けない強みを見つけて、磨くことをずっと指摘されていました」

ヘディングやロングボールの対応は他に負けない強い自負があった千田は、その武器に磨きをかけるべく練習に取り組んだ。

しかし、プロ入りすると状況が変わる。「大学で強みばっかり磨いていたしわ寄せがいまやっと来ている感じで、技術面でもぜんぜん足らない部分がたくさんあった。秋田に来てからは、足元の技術なども毎日毎日練習しています」。そうして少しずつ自分に自信が出てきた頃に、スタメンに抜擢されたという。

チームを引っ張る役割も念頭にある。千田は練習中や試合中、周囲を鼓舞するように、あるいは目を覚まさせるように手を叩く。

「CBは全部後ろから見えていますし、チームがどういう雰囲気なのかわかるんです。もっと締めていかなきゃいけないなとか、うまくいっていないなと思ったときは何かできないかなと思ってやっています」

次節は千田にとって、何かと縁のある福島戦。

縁のひとつは、大学時代のもの。5得点を挙げ、現在の福島のチーム得点王となっている星広太は、千田の神奈川大学サッカー部の2年先輩にあたる。「キレッキレな感じで、ドリブルも上手いですしサッカーのセンスがある感じでした」と大学時代の印象に触れる。「あの代は神大(じんだい)のなかでも黄金時代というか、伊東純也選手(柏)とか、高木利弥選手(山形)もいて。あの代が関東大学サッカーリーグで1部に上げたのを、僕らが3年のときに2部に落としてしまったので」千田が4年のときには、引き分け以上で昇格が決まる東洋大学との試合で、後半アディショナルタイムの失点により1部昇格を逃した痛恨の思い出がある。

星は福島では主に左サイドを担当していることから、千田が右CBで出場すれば、マッチアップの可能性は大いにある。どのような心境で臨むのだろうか。

「そりゃあ負けたくないですよね、広太君には。1部に上げた立役者の1人に対して、僕の中で少なからず劣っていると感じていたので…広太君がいまはどうなのかを見てみたいのもあります。でも、負けたくないですね」

もうひとつの縁は、地元のつながり。福島の大卒ルーキーGKの堀田大暉は千田の隣町の出身で、小学生から交流のあった間柄。さらにベガルタ仙台ユースの同期生であり、関東大学サッカーリーグで戦ったライバルでもある。「高校時代は学校のとき以外はほとんど一緒にいたようなもので、大学時代も遊んでいました」

堀田が今年5月、練習中に「鼻中隔骨折、眼窩内壁骨折、前頭蓋底骨折、気脳症、脳挫傷、急性硬膜下血腫」の大怪我を負った。すでにメンバー入りするまで回復しているが、出場機会はなかなか得られていない。千田は堀田の回復に安堵しつつ、ピッチでの再会を楽しみにしている。

次節はホーム最終戦でもあり、周囲はリーグ優勝のかかる残り3試合の行方に注目する。しかし千田は「あんまりまだ実感はできていないです。もし優勝したとなったら、実感ができるかもしれない。意識していないといえば嘘ですけど、1戦1戦勝って、その結果が優勝になったらいいんじゃないかな、くらいですね」と目の前だけを見る。自身の課題を見据え、直前の試合に全ての成果を出そうとするからこそ、次を考えることはしないのだろう。そしておそらく、チームそのものもそんな状況に違いない。

自らの強みを磨き、足りないものに向き合ってより成長する。それこそがチームにとって何よりの力になる。いま、千田の前途は洋々だ。

文:竹内松裕(秋田担当)


明治安田生命J3リーグ 第32節
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