【広島 vs 名古屋】 ウォーミングアップコラム:インテリジェンスとパッション。丹羽大輝の個性が公式戦5連勝へと広島を導く

2018年3月13日(火)

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瞬間、川村拓夢の身体がビクッとなった。

「タクムッ。もっと寄せろっ」

後ろから、怒気がこもった叫びが聞こえた。丹羽大輝(写真)の声だ。4-0とG大阪を圧倒した試合終盤、普通は全体として緩みがちになる。だからこそ、丹羽は言葉を強めた。ほんの少しの緩みが破綻を呼ぶ。それがプロの世界であることを知っていたからだ。

「丹羽さんに怒られて、目が覚めた感じです。やっぱり公式戦のデビューで緊張していたのかもしれません」

18歳の若者は笑顔でそう言った。丹羽ほどの実績と経験を持つ選手が、自分を気づかせてくれたことが嬉しかったのだ。

「もちろん結果を出すことが大切。でも、もっと大切なのは結果を出し続けること。だからこそ、締めるべきは締めないとね。まだ始まったばかりだから」

3冠をとったことも降格したことも、J2からJ1に昇格したこともある。昨年は残留争いにギリギリで勝ち残った。様々な経験値を丹羽大輝という男は積み上げ、32歳の今もピッチに立ち続けている。昨年は不慣れなサイドバックでプレーし、そして今季はセンターバックに戻ってもののリーグ戦ではベンチスタート。開幕戦ではベンチ外の憂き目にもあった。

だが、それでも彼はいつもどおりに続けていく。練習で100%以上の力を発揮し、練習後も黙々と走り続ける。昨年同様、チームの盛り上げ役も買って出て、川村を叱ったルヴァンカップG大阪戦後は親友・千葉和彦のユニフォームを着てサポーターの前に立った。千葉の想いを表すために。

CBのポジション争いは厳しい。絶対的な信頼を獲得している水本裕貴をはじめ、圧倒的な身体能力を持つ野上結貴や技術が高く将来有望な吉野恭平など、一騎当千のタレントがひしめく。それでも丹羽は、自分の姿勢を崩さない。

「今年に賭ける想いは強いし、頭と身体も(動きが)合致している。だからこそ、今は自分を高めていくことだけを考えていますね。パフォーマンスとコンディションをあげ、年齢は関係なく成長しようという意欲を持ち続けること。メッシやクリスティアーノ・ロナウドと比較したら自分なんて足りないものばかり。でも、だからこそ、もっと上手くなりたいと思えるから」

どんな状況下でもモチベーションを下げず、トレーニングで続けてきたからこそ、G大阪の強力攻撃陣を封じることができた。J有数の「個」であるアデミウソンの良さも出させないまま、交代に追い込んだ。中澤佑二や昌子源のように、強烈な高さや強さで相手を踏み潰してしまう迫力は、丹羽にはない。だが、的確なポジション取りと予測、相手との駆け引きを駆使して、ストロングポイントを消してしまう。そんな知的守備を楽しませてくれるのが、丹羽大輝という存在だ。こういう選手から若手が学べることは山ほどある。

丹羽と同様にインテリジェンスに満ちたプレーで、サッカーが知的ゲームであることを教えてくれるのが、佐藤寿人という偉大なストライカーだ。昨年、広島から名古屋に移籍し、エディオンスタジアム広島では初めて、アウェイ側のロッカールームに入る。丹羽大輝とは何度も何度もマッチアップした関係だが、まさか丹羽が紫のシャツを着て、アウェイ側に佐藤寿人がいるという試合がくるとは、誰も予想できない。サッカーとは、人生とは、なんて数奇なものなのか。

「寿人さんは常にリスペクトしている選手。駆け引きをより高いレベルで楽しめる相手です。2人ともシュートとかブロックとか、それ以前のところで勝負できる。準備とか予測とか、そういうものがお互いの頭の中で繰り広げられた結果として、パフォーマンスを表現している。そこをまず楽しんで、結果を求めてやっていきたい」

広島は今、公式戦4連勝中。G大阪・鹿島戦と2試合連続無失点であり、4試合で失点はわずか1。素晴らしい堅守をベースに結果を積み上げているが、明日の佐藤寿人は危険極まりない相手だ。エディオンスタジアム広島もサンフレッチェ広島も知り尽くしているし、ゴール前での駆け引きなら今も日本一。丹羽大輝と繰り広げる守備ライン付近での知的攻防は、一見の価値があるはずだ。19時30分キックオフとやや遅めであるから、仕事終わりでも間に合う可能性が高い。天気予報も晴れ。ぜひ、J屈指の知的攻防戦をライブで味わってほしい。

文:中野和也(広島担当)


JリーグYBCルヴァンカップ 第2節
3月14日(水)19:30KO Eスタ
サンフレッチェ広島 vs 名古屋グランパス

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