【広島 vs 横浜FM】 ウォーミングアップコラム:2連続PKストップを成し遂げた最高の守護神・林卓人は、満足できない男でもある

2018年4月10日(火)


どんなシュートでも、絶対に止められる。
それが、林卓人(写真)の信念である。
傍目からは「とてもじゃないが止められない」と感じるシュートは、ごまんとある。それはもちろん欧州や南米のサッカーを見てもそうだが、Jリーグでも至るところに存在する。だが、林の信念は違う。2015年、平均失点0.88という記録を打ち立てた時に、彼が言いはなった言葉を振り返ってみよう。
「テレビの実況や解説の人が“このシュートはGKにとってはノーチャンス”というじゃないですか。あの言葉、めっちゃ嫌いです。ノーチャンスのシュートがあるのなら、GKなんている意味がない。どんな状況でもどうにかするのがGKの仕事。素晴らしいシュートに対しても、どうすれば手が届くのか。とめられるようになるのか。そう考えて、トレーニングしている。それはたとえ、クリスティアーノ ロナウドのシュートだって同じこと。絶対に止められないシュートなんて、ないんです」

その主張はかつて「試合はもちろん、シュート練習で打たれるボールも全て止めたい」と語った師・下田崇(現U-21日本代表GKコーチ)が現役時代に語った言葉を彷彿とさせるものがある。そしてその高い理想を現実化するために、林は常に成長の起爆剤を探し続ける。プロテニスプレーヤーのステップがGKにとって参考になると思えば、テレビでテニスを観戦し、じっと彼らの動きを見続けることもあるほどに。

成長への意識が高いから、林は2015年の自分自身に満足せず、新しいトレーニングにも取りくんだ。
「自分自身、これほどにストイックに取り組めるのかと思うほどハードにやったつもり。でも結果がついてこなかった」
2017年8月15日、腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けて全治8週間の診断。しかし、ピッチに戻ってきてもあがってこない肉体に「引退しなければいけないのか」という危機感も生まれた。そこは木本実トレーナーとの二人三脚で危機は脱却したものの、パフォーマンスそのものの問題は片付いていない。2017年、自分の身体やプレーをもう一度見直し、これまでの取り組みを「失敗」と位置づけつつ、そこから新スタートに向けての新しい材料を探した。加藤寿一GKコーチとの取り組みの中から、自分の向かうべき方向性を模索し続けた。その結果として6試合1失点。PKを2本与えて2本とも止めるという快挙にもつながった。2015年、浦和・名古屋・山形と3本続けてPKを止めた実績につぐ記録である。

だが、林は決して足を浮つかせない。
「みんな前半からハードワークしている。だからこそ、守れていると言えるけれど、もっと攻撃の時間を長くしたい。体力的な部分を考えても。自分ももっとビルドアップに関わりたいし、トライしていくところはトライしていきたい。
自分自身のプレーにしても、まだ2015年のレベルにようやく戻ってきただけ。これが自分の水準。もっともっと、積み上げたい。楢﨑正剛(名古屋)、川口能活(相模原)、そして下田崇を上回る日本のGKは出てきていないのが現実。サッカーの質やGKに求められていることは変わっているが、シュートを止めるということに関しては、3人の先輩方は本当にすごいから」

明日の横浜FM戦では連戦を考慮してメンバーの交代が予想されている。しかし、林卓人がゴールマウスの前に立っていることだけは、間違いあるまい。ルヴァンカップでは中林洋次が頑張っているし、成長を見せ付けて背番号1にプレッシャーを与えてはいるが、まだまだ林の牙城は揺るがない。2003年、下田崇はシーズン全てのPK(3本)を止めたという金字塔を打ち立てた。同年の対横浜FC戦では1試合2本のPKを全て止めた。そういう偉大なる先輩の姿をベンチで見つめていたからこそ、林卓人に満足という二文字はないのである。

文:中野和也(広島担当)


明治安田生命J1リーグ 第7節
4月11日(水)19:00KO Eスタ
サンフレッチェ広島 vs 横浜F・マリノス

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