【栃木 vs 大宮】 ウォーミングアップコラム:父との堅い約束――。ヘニキが頑張り続けられる理由。

2018年5月26日(土)


攻撃でも守備でもピッチの右サイド半分はすべてカバーしてしまうような驚異的な運動量で観衆を沸かせるヘニキ(写真)。その無尽蔵のスタミナと献身性は父親譲りのようだ。祖父は名門コリンチャンスのユースのGK、父・ルイジーニョはあと一歩でプロになれる選手だったが断念した。体力系のテストでは所属するチームで常にトップクラスの選手だったという。
「父は母の看病を優先して、プロ入りを断念したんです」
14歳の頃に父にかけられた言葉をヘニキははっきりと覚えている。それは父のアマチュアチームの試合に一緒についていったときだった。
「この子はプロになれそうなのかい?」
チームメイトが父に聞いた。チームメイトは父にプロになれる能力がありながら断念した事情を知っていた。そしてプロになる夢を息子に託そうとしていたことも知っていた。父がチームメイトたちを見渡し、ヘニキに向き直すとこう言った。
「私の夢は、ヘニキと一緒にどこか遠くの国にいって、ヘニキがプロ選手として活躍する姿を見届けることなんだ」
ヘニキは父がプロになれなかった無念を子どもながらに感じていた。
「父がなれなかったプロサッカー選手の夢をかなえる。それが私と父の夢でした」
クリシウーマというプロクラブのユースでの寮生活は激しいライバルとのポジション争いが繰り返され、そしてお金がまったくない厳しい生活が待っていた。ヘニキの心は疲弊し、ついに折れそうになっていた。車で10時間以上かかる実家に電話を繋いでも「ヘニキ、力になれなくてごめんな……」、母の看病で疲弊する父の言葉をただ聞くしかなかった。
だが、ヘニキは諦めなかった。父と自分自身の夢をかなえるために必死にボールを追い続けた。一日たりとも、一瞬たりとも、気を緩めることなく、サッカーに一生懸命に取り組んだ。苦しそうな仲間がいれば、彼のためにも走った。それが、プロサッカー選手になるために必要なのだと父に説かれ、守り続けようとした心に決めた約束だったからだ。それが今の自分にできることなのだと肝に銘じて走り続けた。
そうしてヘニキはチャンスを掴んだ。ある日、トップチームの練習に参加したとき、練習後にプロ選手から「君はどこかと契約しているのか?」と声をかけられた。ヘニキが首を横に振るとそのプロ選手は驚き、クラブのフロントに「彼とすぐに契約すべき」だと進言してくれた。
「ヘニキ、よかったな……。本当によかった……」
電話口で父が号泣するのがわかった。ヘニキと父はついに夢をかなえたのだ。

2015年、ヘニキと父は岐阜の町にいた。その前年、FC岐阜と契約したヘニキが父を日本へと連れてきたのだ。そこで父は、いつもヘニキがそうであるように、岐阜で出会う誰ともすぐに打ち解けて笑顔を振りまき、輪の中心になって楽しんだ。そして父は岐阜でヘニキがプロ選手として活躍する姿をじっくりと見届けて、ブラジルへと帰っていった。14歳のとき、二人が交わした約束はついに果たされたのだ。

二人三脚で勝ち取ったプロサッカー選手への道。ヘニキは今、父とともにまた新たな夢に向かって歩き始めている。
「タイトルを獲ることです。それが父と結んだ新たな約束です。タイトルを獲るという夢に向かって、まずは栃木でチームの目標を達成したい。栃木をもっと高みを目指せるチームにしていきたいんです」
父との約束を果たすべく、ヘニキは力のかぎり走り続ける。

文:鈴木康浩(栃木担当)


明治安田生命J2リーグ 第16節
5月27日(日)14:00KO 栃木グ
栃木SC vs 大宮アルディージャ
栃木県グリーンスタジアム(栃木SC)
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