【横浜FC vs 大宮】 ウォーミングアップコラム:「秘蔵っ子」から頼れる「アニキ」へ——。先人たちのバトンを受け継いで走り続ける野村直輝

2018年10月20日(土)


前々節、それまでの5試合を1勝1分3敗で迎えた栃木戦。順位からいえば当然に勝点3を計算していた試合に、横浜FCは終盤の猛攻実らず痛恨のスコアレスドローに終わった。佐藤謙介のスルーパスに抜け出したレアンドロ ドミンゲスのシュートがわずかに枠を外れた瞬間、タイムアップの笛にガックリとうなだれる選手たちの中で、野村直輝(写真)の大きな声が響いた。

「まだまだ! ここから!!」

4試合ぶりに怪我から復帰し、途中出場で心身ともに余裕があったといえばそうだ。それでもあまりに痛すぎる勝点2を失った状況で、手を叩き、顔を上げるよう仲間を鼓舞するのは誰にでもできることではない。有言実行。前節、スタメンに復帰した野村の攻守にわたる活躍で、横浜FCは愛媛から勝点3を奪って自動昇格争いに踏みとどまった。

横浜FCで最も成長した選手かもしれない。6ゴールを挙げた昨季も攻撃の大事な駒ではあったが、替えが利かないというほどの存在ではなかった。しかし今季途中から3ボランチを採用したことが彼にとっても転機となった。時には最終ラインまで下がってビルドアップを助け、フィニッシュの場面では前線でイバとレアンドロ ドミンゲスに絡む。

消えている時間はほとんどない。単純化すれば「8人で守って前線の2人に託す」横浜FCの戦術は、実行の段階でいろいろと無理が多い。その無理なところを運動量と技術、天性の勘ともいえる戦術眼で円滑に回す背番号7は、今やチームにいなくては困る存在であり、もはやJ2レベルの選手ではない。

野村が怪我している間に代役を務めた齋藤功佑は、「俺が出てたとき勝てなかったですからね。レアンドロとイバの調子をうまく引き出せなかった」と反省を口にした。そして野村の復帰後、外から試合を見たことで、「ノムくんがいろんな選手にボールを預けてもう一回受けることによってチームのリズムを作って、みんなの調子も上がってくる感じがした」と、改めて野村の仕事の凄みに気がついたという。

野村自身は本来攻撃的な選手だけに、ここまで5ゴール4アシストの結果に「全然でしょ」と満足はしていない。「去年までみたいに好きにやらせてくれれば、もっと攻撃で違うものが見せられる」という自負もある。それでも「チームが勝つことが一番大事だから。走ってボールを奪って、また走って前へというのは自分のストロングポイントでもある」と、チームのために走り続ける。選手としての輪郭は、間違いなく一回り大きくなっている。

何よりも今季の彼に目をみはるのは、プレーも含めてチームを引っ張る姿勢だ。栃木戦の後のことも、本人は「いつも言っていること」だという。「終わった瞬間にピッチに寝転んじゃうのは一番最後の試合でいい。本当にそこまで突き詰めてやったかというと、そうでもないと思うし、もっとできると思うから」。プロ5年目、「自分がやらなきゃという自覚と、チームを客観的に見れるようになった」といい、「発言と行動でチームを引っ張っていく」責任感も芽生えた。「それはこのチームで教えてもらったことだから」と野村は言う。
「モト(山口素弘元監督)さん、そのときコーチだった(チョン)ヨンデさん、マツ(松下裕樹)さん、(安)英学さん、チビ(飯尾一慶)さんもそうだし、そういう人たちが教えてくれた、背中で見せてくれたことが今の自分に染み付いている。そこは絶対に忘れてはいけないし、残していかなければいけないと思っている」

そしてユース卒3年目、21歳の齋藤が今、野村の背中から学んでいる。「チームのことをすごく考えていることが伝わってくる。出てない選手、チャンスが少ない選手にも気にかけるだけじゃなくて、モチベーションを上げるような声かけをしてくれる。そういうところも見習っていきたい」。そうして受け継がれていくのだろう。

かつて山口元監督の「秘蔵っ子」と呼ばれた大卒ルーキーは、今や頼れる「アニキ」になろうとしている。「今年が最後。それくらいの気持ちでやっているし、必ずこのチームをJ1に上げる」と、野村はまっすぐに前を見つめた。

文:芥川和久(横浜FC担当)


明治安田生命J2リーグ 第38節
10月21日(日)14:00KO ニッパツ
横浜FC vs 大宮アルディージャ
ニッパツ三ツ沢球技場(横浜FC)
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