【千葉 vs 京都】 ウォーミングアップコラム:「やり残したこと」だったJ1昇格に監督として改めて挑む江尻篤彦

2019年3月23日(土)


3月19日、ユナイテッドパークの練習グラウンドには、ある人々にとっては懐かしく感じられる大きな声が響き渡っていた。フアン エスナイデル体制3年目の今季、スタートダッシュを図りたい千葉だったが、愛媛と対戦した開幕戦は主力選手2人が前半のうちに負傷交代し、第3節・山口戦は14分に退場者が出るなどアクシデントが続いた。第4節・水戸戦は試合終了間際の失点で1-1と引き分け、第4節終了時点での戦績は2分2敗の21位。
クラブは水戸戦が行なわれた3月17日の21時にフアン エスナイデル監督の解任を発表し、翌日の3月18日にコーチから昇格する形での江尻篤彦(写真)監督の就任を発表した。そして、オフ明けの3月19日、水戸戦のスタメンのほとんどはリカバリーのメニューだったが、それ以外の選手を指導する江尻監督は、以前に千葉の監督を務めていた時と同様に大きな声を張り上げて選手に指示を出し、鼓舞していた。

「もともと熱い人で、コーチではちょっとおとなしかったですけど、久々に大きな声を聞けて元気だなっていうのを感じたので(笑)」

そう話したのは、江尻監督時代の2010年シーズンの千葉でキャプテンを務めていた工藤浩平だ。江尻監督は千葉がJ1残留争いの渦中にいた2009年7月、今回と同じようにコーチから昇格する形で監督を務めた。だが、なかなか思うようには勝つことができず、失礼を承知で書けば、ストレスからなのか江尻監督は一気に白髪が増えた。かつて江尻監督と千葉(当時は市原)でチームメートだった明海大学サッカー部の八津川義廣監督は、当時、市原とのトレーニングゲームの際に筆者に会うと、こんなことを言った。
「これでうちのほうが勝っちゃうと、エジさん、白髪がまた増えちゃうんじゃないかな」

千葉は前身の古河電工サッカー部時代から常に日本サッカーのトップリーグに所属し、一度も2部リーグへの降格を経験したことがなかった。それだけに江尻監督が感じていた重圧は周囲の想像以上だっただろうし、恐らく白髪染めをするような精神的な余裕も時間的な余裕もなかったのかもしれない。2008年シーズンはJ1リーグ戦最終節で『フクアリの奇跡』と呼ばれる大逆転勝利を収め、大逆転のJ1残留を果たした千葉だが、江尻監督の就任後は1勝5分9敗で最下位でのJ2降格。J2リーグ戦で上位3位はJ1自動昇格だった2010年シーズンは4位に終わってJ1昇格を逃し、江尻監督は千葉を去ることになった。

今回、再び千葉の監督に就任し、囲み取材の場に立った江尻監督の表情は晴れ晴れとしていて、ドンとかまえているような悠然とした雰囲気すら感じられた。
「10年ぶりにもう一回チャンスをもらったので、しっかり結果を出せるように頑張っていきたいなと思っています。監督を引き受けるにあたっては複雑な気持ちではありましたけど、個人的な部分を含めて、やり残したことが前回あったので、こういう状況ではあるんですけども、僕の気持ちの中では『やってやるぞ』というような気持ちになりました。意味のない勝ちもないし、意味のない負けもないと思っているので、そのところはしっかり分析をして、今の順位から少しでも這い上がれるように、なるべく早く這い上がれるようにしたいと思います」

フアン エスナイデル前監督時代によかったものを継承していくという江尻監督に、報道陣はサッカースタイルや戦術など新たな『江尻カラー』を含めた具体的なものを言葉として発してもらおうと、多くの質問をぶつけた。筆者も前回の監督就任時はJ2での戦いが監督自身も、クラブも、そして選手個々も初めてだったが、コーチとしてではあるもののJ2での戦いを経験してきたことで強みと感じるものはあるのかと質問した。すると、江尻監督は「赤沼さんにはいろいろと事細かくお話ししたいんですけども」と言ってくださったものの「いろんなところで日本の監督さんというのは僕の発言をいろいろ聞いている人も多いので。情報戦は始まっているので、余計なことは話をできないんですけども」ということで、詳しくは教えていただけなかった。前回の監督時代、自分が発した言葉が独り歩きをしたり、対戦相手の有利に働いたりしたことを反省してのことだという。

「僕の中ではジェフを離れる時に『俺はこのクラブでないとダメなんだな』っていうのも、その時に本当によくわかりましたし、クラブが必要としているんだったら何を置いてでも、海を渡ってでも、来ようという決意が僕の中にはありました。こういう形で、巡り合わせがあったのか、なかったのか、どうなのかわからないですけど、もう一生懸命やるだけかなと。『前回、おまえはどうだったんだ』っていう人の言葉も当然あると思うし、それは真摯に受け止めています。自分の未熟さをあの時は痛感したというのもあるのですが、今回はまた勉強させてもらって、新たな僕自身の船出だと思っています。J2は他の国と比べても特殊なセカンドディビジョンだということは、いろいろ経験させてもらって熟知しているつもりでいるので、こちらもしっかり準備をしようかなというふうに思っています」

『勝負の神様は細部に宿る』という信念を持つ江尻監督らしく、トレーニング中から細かく指示を出す姿を、船山貴之は「練習中はフアン(エスナイデル前監督)よりもちょっとうるさいんじゃないかな(笑)」と表現した。これまでは試合前日だけだったトレーニングの完全非公開を、監督としての初戦となる今節に限っては3日前の3月21日から実施。できる限りの準備をして、クラブとして仕切り直しとなる今節の京都戦を迎える。3月21日の取材時に工藤はこんなことも言っていた。
「個人的にはやっぱりエジさんでJ2に落ちて、J1に上がれなくてという悔しいシーズンも送っているので、そのリベンジじゃないですけど、エジさんが次に監督をやったタイミングで僕も(チームに)いるというのも何かの縁も感じますし、しっかり力を貸しながら、チームとしてJ1に行けるように努力していかなきゃいけないなと思います」

かつて『ミスター・ジェフ』と呼ばれた江尻監督は「やり残したこと」だった千葉のJ1昇格を達成し、クラブの歴史に喜びの1ページを書き加えようとする戦いに挑む。

文:赤沼圭子(千葉担当)


明治安田生命J2リーグ 第5節
3月24日(日)14:00KO フクアリ
ジェフユナイテッド千葉 vs 京都サンガF.C.
フクダ電子アリーナ(ジェフユナイテッド千葉)
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