【相模原 vs F東23】 PKストッパー・田中雄大。その原点は青森山田高時代に遡る

2019年7月12日(金)


あとはリードを守り切るだけ。そんな中で迎えた90分。自陣エリア内での接触に対し、主審は迷わずペナルティースポットを指した。静まるスタジアム。三浦文丈監督もショックを隠せずにいる。しかし、田中雄大(写真)は動じていなかった。

「それまでの90分を通して、チームに貢献できていないという実感があったので、PKになったときも逆にありがたいというか、『見せ場が来たな』と」

相手のキックを完璧に読み切ると、枠内に飛んできたボールを見事に弾き出す、値千金のビッグセーブ。連敗を2で止める、勝利の立役者となった。

元来、PKは得意としていた。ただ、今季2度訪れたPKの場面では止め切れず、試合後には「自分が悪い」と自責した。そんな中で迎えた3度目。「ナベさん(渡辺彰宏GKコーチ)にも『昨季は止めていたし苦手というわけではないんだから、自分を信じてやれよ』と言われて、次に来たときは自分を信じてやろうと思っていた。PKになった瞬間も(丹羽)竜平さんが「自信を持て」と言ってくれたので、そういう声が大きかった」。ヒーローは、ベンチメンバーを含めたチームメイトの支えに対し、感謝の言葉を口にした。

なぜPKに強いのか。その原点は青森山田高で過ごした3年間にあるという。

「インターハイや選手権も(延長戦がなく)即PKで、PKがけっこう多かったので、PKを運にさせないというか、実力で(勝利を)持ってくるくらいの練習はしていました。最初1年生のときは、湯田(哲生)さんや大久保(隆一郎)GKコーチに、『助走やそのスピード、角度でそれぞれどっちに飛ぶか』という感じで理論的に教えられたので、もう頭が全然ついていかなくて(笑)。でも、本数が増えていくと、考えなくても『この場合はこう』と感覚になってくるので、そこに到達するまで、PKにかかわらずシュートはめちゃくちゃ受けてきました。話せば理論的なんですけど、もう感覚になってきていますね」

青森山田高といえば、たとえPK戦にもつれ込んでも勝ち切る強さがある。実際、田中の近い年代でも、櫛引政敏(山形)や廣末陸(山口)と、PK戦に強いGKは毎年のごとく存在していた。瀬戸際に追い込まれながらも勝ち切る強さ。それは「小さいことからこだわっていた」という黒田剛監督の指導の賜物だと田中は言う。

「監督がいつも言うんですよね。『どれだけ練習しても、努力していても、一瞬の気の緩みで勝敗は分かれてしまう。だから、良い準備はしているかもしれないけど、最後の笛が鳴るまで気を抜くな』と。そういうことは常々言っていたので、細かいところを選手たち自身が突き詰めてやっていましたし、サッカー以外に、人間として成長させてくれました。みんなが高い志を持ってやっているので、満足したり勘違いする人もいませんし、そういう緊張感から相乗効果が生まれて、山田は毎年PKが強いのかなと思います。山田の指導方針だったりGKコーチの教えが素晴らしいというのが、結果にも出ているので目に見えて分かりますよね」

気の緩みを見せず、常に向上心を持って取り組む。そんな教えを叩き込まれた3年間の濃さは、まさにいまの田中の言葉を聞いていても垣間見える。

「(PKを止めて勝利に貢献しても)全然足りないですね。まだまだという気持ちが自分の中では大きいので、もっとチームに貢献したいですし、個人としてもチームとしてもまだまだ上を目指しているので、満足することなく向上心と意欲を持ってやっていきたいです」

「チームに貢献できていない」「止められない自分が悪い」「全然足りない」――。時にはさすがに自分に厳し過ぎるんじゃないか。そう思うことがある。それでも、彼はそれらをすべてプラスのエネルギーに変える。川口能活から受け継いだ背番号1。その責任とともに、田中雄大はさらなる高みを目指す。

文:林口翼(相模原担当)


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