【新潟 vs 徳島】あの夜の矢野貴章の一撃を無駄にはできない

2019年8月3日(土)


3連戦の2試合目となる前節、アウェイのFC町田ゼルビア戦は、2-0で試合を折り返しながら、53分からの20分間で3失点。2-3と逆転されて終盤に突入した。

町田市立陸上競技場の記者席からピッチを凝視していて感じたのは、恐怖だった。前々節のFC琉球戦から中3日で町田戦を迎える間に、10番でキャプテンの加藤大がアビスパ福岡に、地元出身で下部組織から生え抜きの川口尚紀が柏レイソルに期限付き移籍。加藤はボランチとして15節まで、川口は右サイドバックとして16節まで、開幕から先発し続けていた主力たちだ。彼らが去って最初の試合をこんな形で落としてしまったら、いったいチームはどうなってしまうのだろう?

瓦解の恐怖を吹き飛ばしたのが、84分、高木善朗の右CKから渾身(こんしん)のヘディングシュートで決めた、矢野貴章(写真)の同点ゴールだ。矢野はその5分前、交代でピッチに入ったばかりだった。

得点直後、右手のこぶしを握りしめ、グッと前に突き出したのは、「自分の中にあった、いろいろなものが自然に出た」から。「この試合、まだ行けるというのもあったし、僕自身、長く点を取っていなかった。監督が代わってから、ゴールがなかったので」。

第2節のジェフユナイテッド千葉戦以来となる今季2ゴール目。それをただ喜ぶのではなく、厳しく客観視できるところが彼らしい。

「その前の琉球戦に4-0で勝って、町田戦も2-0にしながら、逆転される。連勝できない、同じように2-0から逆転負けした愛媛戦(第14節)から何も変わっていないじゃないか、と言われて当然のゲームをやってしまった。何とか追いついて踏みとどまったのはよかったけれど、まだまだ詰めが甘い。ここから僕らは連勝していかなければならないし、ましてや2-0のゲームから、町田戦のような展開を繰り返しちゃいけない」

25節を終えて、チームは13位。プレーオフ圏内の6位横浜FCとの勝点差は7。まさに、2点リードしながら逆転された試合を追いついて、何とか踏みとどまっているのが現状だ。

明日の徳島ヴォルティス戦から始まる8月の5試合は、現時点で上位のチームばかり。4月に片渕浩一郎監督が解任されて吉永一明監督が就任し、7月に主力2選手が移籍するという、激動の今シーズンここまで(キャプテンの夏の移籍は、現在V・ファーレン長崎でプレーする昨年の磯村亮太に続き2年連続)。自分たちより下位のチームに取りこぼすことが少ない代わりに、上位に勝っていない流れの中で、8月の連勝を目指す。

あのとき、矢野がこぶしに込めた想い。それを今、僕たちはしっかり共有することが求められている。

「2-0から3点取られてどうしても下を向いてしまったけれど、あのゴールが決まって、“やっぱりまだ行ける”と思った。時間もあったし、今度は僕らがパワーを出す番だ、と。まだまだ行けるよ、そういう姿勢をみんなが出さないといけないよ、というのを示したかったんです」

矢野が言う「みんな」は、ピッチの中だけにとどまらない。ベンチ、スタンド、そして現場にいられなくとも、チームを思うすべての人々にシェアされるものであってほしい。熱帯夜の町田で、何とか引き分けたことはよかった。何とか踏みとどまったのはよかった。8月、アルビレックス新潟の胆力が問われている。

文:大中祐二(新潟担当)


明治安田生命J2リーグ 第26節
8月4日(日)18:00KO デンカS
アルビレックス新潟 vs 徳島ヴォルティス
デンカビッグスワンスタジアム(アルビレックス新潟)
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