【山口 vs 長崎】前貴之が見せる等身大の偉業。センターバックで示した無二の存在感

2019年8月23日(金)


「スーパーでしたね」。練習後の囲み取材で、霜田正浩監督が緊張した表情をほころばせた。「フィジカルコンディションの問題で90分できるかと思ったが、期待以上のプレーをしてくれた。サッカーセンスの塊だという感じだ」。指揮官を唸らせるプレーを見せたのは、『センターバック』の前貴之(写真)だ。

先週の山口はアウェイ柏戦、ホーム(天皇杯)C大阪戦、そしてアウェイ甲府戦と厳しい日程が組まれた。さらには主力選手が移籍したり、台風が接近したりと、状況は悪化。甲府戦では成長著しい菊池流帆が累積警告で出られず、文字通りの嵐の連戦となった。

霜田監督はアウェイの地に加入したばかりの高宇洋や石田崚真を帯同させる一方、システムを4バックに変更。山口の戦術にフィットし、リスク管理とゲームメークに長けた選手をセンターラインに並べた。トップ下に三幸秀稔、ボランチに佐藤健太郎。そしてセンターバックで若い楠本卓海と組ませたのが前だった。

活躍ぶりは結果が示す通り。前は4バックの中央を「最初からやるのは初めてだったと思う」と話したが、「いつもセンターバックに要求していることを意識した。対人するFWの一発だけは怖かったが、それ以外は特に不安はなかった」とプレーに集中。ボランチやサイドバックに積極的に声を飛ばしてリスクを軽減したほか、持ち前の視野の広さを生かし、クリアを選択しがちなボールを確実なパスで味方につなげた。ここぞというタイミングでの対人やシュートブロックでも貢献。前半からゲームを優位に進め、ついに相手のシュートがゴールに飛ぶことはなかった。

「無理するところとしないところの区別が甲府戦はかなりはっきりできていた。カウンターのケアもできたし、カウンターを受ける回数も少なかった。良い戦い方ができていた」

後半の開始前には、前と三幸が長く話し合っている様子がDAZNに映った。「前半から前の選手がかなり追ってくれていた。プレッシャーを掛けるのがうちのスタイルだが、きつければ体力を回復する時間を作った方がいいので、(三幸から)前線の状況を聞いていた」。三幸も普段とは違うポジションに入っていたが、要諦のセンターラインを任された前や三幸が頭を働かせ、11人の大きな箱を自在に伸縮。タフなゲームの主導権を山口が握った。

もっとも山口がこの形を続けるとは限らない。長崎との前回対戦で、前はするするとピッチを縦に抜けて、浅い角度からゴールを奪っている。5月のウォーミングアップコラムで紹介した「偽サイドバック」の本領発揮となった試合だ。再現を期するなら飛び出していけるポジションが良さそうだが、前はシステムにこだわらず最善のプレー選択を心がける。

「3バックであればそのままでミスマッチがあるし、4バックで行くのであればビルドアップでミスマッチを起こしたい。(長崎との前回対戦は)ある程度自分たちのゲームができたが、追いつかれている。甲府戦のようなサッカーをしつつ、結果を求めないといけない。一つ上の順位でもあるし、その点でもとにかく勝ちにこだわりたい」

チームがいかなる嵐に遭おうとも、前は求められたポジションで、求められる以上のクオリティーを勝利の瞬間まで保ち続ける。それがいかに困難なことで、いかにスーパーなことなのかは説明するまでもないだろう。シーズンは残り3分の1。順位表を駆け上がらねばならぬ山口で、前貴之が果たす役割――それは懸かる期待と等価である――は等身大にして、大きい。

文:上田真之介(山口担当)


明治安田生命J2リーグ 第29節
8月24日(土)19:00KO みらスタ
レノファ山口FC vs V・ファーレン長崎
維新みらいふスタジアム(レノファ山口FC)
みんなの総合評価 (4.1)
臨場感 (3.5)
アクセス (3.4)
イベント充実 (3.8)
グルメ (3.6)
アウェイお楽しみ (3.8)

みんなの口コミで作る「スタジアムナビ」
全スタジアムの新着投稿フォト

編集部オリジナル特集

観戦アドバイス大募集!スタナビ「スタジアムグルメ」投稿キャンペーン!

移籍情報