【秋田 vs 八戸】2試合連続で劇的弾の林容平、J2昇格に向けて「可能性がある限り諦めない」

2019年10月26日(土)


林 容平(写真)が笑顔を見せた。

前節の福島戦、1-1で迎えた89分。クロスのセカンドボールを奪った和田昌士が右サイドに侵入。ドリブルで2人を振り切って、ライン際で滑り込みながら中央にクロスを送る。そこに飛び込んだ林はダイレクトでゴール右上に勝ち越し弾を叩き込んだ。

林は前々節の群馬戦でも、1-2でリードを許していた後半アディショナルタイムに貴重な同点弾をねじ込んでいた。林にとってはこれが今季初得点だったが、引き分けは負けに等しいチーム状況から手放しでは喜べない。林の顔には、チームを鼓舞し、勝ち越そうとする鬼気迫る表情があった。しかし福島戦は違った。和田や韓浩康(ハン ホガン)らチームメイトに手荒な祝福を受けてピッチに倒れ込むときにも、試合終了の笛が鳴った後にも林の顔には笑顔があった。

林にとって、今季は苦難が続いた。群馬との開幕戦に[4-1-4-1]の1トップで先発出場するも、33分で負傷交代し、その後4試合を離脱。復帰戦となった第6節のアウェイ相模原戦は勝利したが、その後は2分2敗と下降線をたどる。チームも勝ち切れない試合が続く中で目立ったのは、林が前線で孤立し、相手の複数のDFに潰されてキープできずにボールを奪われるシーンだった。

チームは試行錯誤の末、第10節にフォーメーションを[3-4-2-1]に変更。第11節のアウェイ富山戦では中村亮太が1トップのスタメンで出場し、2ゴールを挙げてチームを5試合ぶりの勝利に導く。中村がスタメンを掴んだ一方で、林は第18節のホーム岩手戦で8試合ぶりにスタメン出場したものの、メンバー外かベンチスタートが多い。

ではなぜ、林が点を取るようになったのか。林はその要因として「チームの成長と、それによるチャンスの増加」を挙げた。「チームの能力が上がってきたのは感じます。前半戦で試合に出ていたときは、なかなかボールが持てなくて。自分のところまでほとんどボールが来ない場面もあった。守備に追われて、ボールを奪ってもすぐにクリアして相手に取られた。結果を出すのが難しい状況だった。いまは試合で結構チャンスも作れている。個人的なところよりも、チームとしての前に運んできてくれる部分がすごく良くなってきている。それでチャンスが増えたというのが一番かなと思います」

もちろん、個人の努力も怠らない。ホームYS横浜戦の前半終了後、ピッチから引き上げようとする中村と、ベンチスタートだった林が短い間話し込んでいた。何をしているのか聞くと、相手DFの動きやスペースができるポイントなどを確認していたという。その行動には、サッカー人生でベンチスタートが多かった林ならではの「試合の入り方」があった。「ベンチでは、常に自分が入ったときのイメージをしながら見ています。でもピッチ内のことはピッチ内でしか感じられない。ロッカーまで戻る数十秒の間ですけど、自分が出るであろう同じポジションの選手に確認しています」

林はFC東京でも大分でもこの確認作業をしてきた。とはいえ、スタメンへのこだわりも「サッカー選手である以上は持ち続けないといけない」と林。途中出場でできるプレーを、スタメンで出ても試合を通してできるのが一番いい選手であり、そこを目指したいと言い切る。

中村は今季10得点でキャリアハイを更新中。しかし林も2試合連続得点中だ。林と中村は「点を取れないほうが試合に出られないくらいのプレッシャーを掛け合ったら一番いいね」と話し合ってきたという。2人とも試合に出ていない時期があり、なかなか実現しなかったこの関係性が、シーズン終盤のチームにもたらすものは大きいのだろう。

普段は穏やかな青年だが、試合になると厳しい顔つきになる。「試合が始まるにつれて、顔が変わってくると言われますね。気持ちのパワーが自分の武器で、それがあるからやってこられたと思います」と微笑む。

秋田のJ2昇格は厳しい状況にあることは変わらない。しかし林は「可能性がある限り諦めない」と言い続ける。大分時代など、これまでのキャリアで終了間際に劇的な得点を挙げてきた。その男の言葉には説得力がある。

文:竹内松裕(秋田担当)


明治安田生命J3リーグ 第28節
10月27日(日)15:00KO ソユスタ
ブラウブリッツ秋田 vs ヴァンラーレ八戸
ソユースタジアム(ブラウブリッツ秋田)
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