【北九州 vs 讃岐】「通過点」への門を開くとき。福森健太が挑む、J2復帰へのミクスタ決戦
2019年11月23日(土)

鹿屋体育大学に在学中の16年、福森健太(写真)は特別指定選手として北九州のユニフォームに袖を通し、2試合を戦った。出場時間こそ短かったが、積極性を随所に感じるプレースタイルは当時も高く評価されていた。だが…。一連の試合から数カ月後、福森がプロ生活をスタートさせたときの北九州はJ3に突き落とされていた。
「その日その日を成長できるように」。降格1年目も、その翌年もチームは低迷。J2時代を含めた3年半の間に5人の指導者のサッカーに触れることになった。ただ、福森は下を向かず、日々のトレーニングに打ち込んだ。今は小林伸二監督が志向する攻撃的なスタイルの完遂に向け、体と頭を使う。
努力は実を結びつつある。シーズン序盤はベンチスタートが多かったが、第20節G大23戦からは全ての試合で先発出場中。これまでは右サイドバックを主戦場としてきたが、「公式戦で出たことはなかった」という左サイドバックでポジションを確立し、左右で遜色のないプレーを見せつける。
「左サイドだからできるプレーも多く、楽しんでやれている。左足で持てば相手が縦を切りきれないときにそのままサイドバックの裏に流せる。自分の持ち方で相手の動き方が変わる。うまくやれている」
非凡さとチーム戦術が理想的な融合を見せたのが第28節YS横浜戦だ。福森は相手サイドバックを置き去りにして左サイドを破ると、すぐに左足でクロスを上げ、町野修斗の逆転ゴールをお膳立てした。
「僕が意識しているのは最後のラインを突破するということ。そこができたら、相手のディフェンスは自分のゴールに向かって走らないといけないし、僕自身はフリーな状態でクロスを上げられる。(YS横浜戦のクロスは)狙い通りの形。最終ラインを突破して僕もフリーだったし、町野も飛び込んでいくスペースがあった」
最終ラインを突破するにはタフな上下動やサイドハーフとの連係がカギを握る。福森は「運動量は求められている」と話し、持ち味をより高いレベルで発揮するためにフィジカルも強化。運動量も質も落とすことなく、チーム戦術を90分間にわたって遂行する。
「チーム全体として運動量や球際、切り替えは大事にしているし、前線からプレスに行けるように最終ラインが押し上げていかないといけない。ゴールを守るというよりは、ゴールを取りに行くための守備。攻めるために守る。それを理解して行動している」
充実した表情を浮かべる福森。町野へのアシストも、チームの失点の少なさも、福森の貢献を語る証左だ。時にチームのパーツになり、時に自分らしさを前面に押し出し、攻めるべきゴールに向かって戦う。
今節はJ2復帰が懸かる一戦。福森は「34試合あるうちの一つなので、勝つためにプレーするだけだ」と気負わず、積み重ねてきたプレーを普段通りに表現したいという考えを示した。
「チームとしても将来的にはJ1で戦いたいという目標があると思う。その過程の中にあると考えると、J2昇格が決れば喜ぶのは喜ぶが、あくまでも通過点。常に上を見ながら、個人もチームも成長していけるようにやっていきたい」
北九州は3年の修行を経て、再び開けるべき門扉に手を掛けた。他会場の結果にかかわらず勝利すれば門の鍵は回り、極致への次の通過点が姿を現す。まずはJ2だ。大いなる通過点へ、福森健太はいつもと変わらぬ凜とした姿で、黄色く染まるスタジアムの熱狂に飛び出していく。
文:上田真之介(北九州担当)
明治安田生命J3リーグ 第32節
11月24日(日)15:00KO ミクスタ
ギラヴァンツ北九州 vs カマタマーレ讃岐
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