【名古屋 vs 川崎F】真の万能型として戦力になるために。秋山陽介は頭も足も疾走し続ける。

2020年8月11日(火)


“万能型”とは危険な表現で、ともすればそれは“器用貧乏”と揶揄されることだってある。どのポジションでもプレーできる、では足りず、どのポジションでも水準以上のプレーをしてようやく“ユーティリティー”、どこでも違いを見せてこその“万能型”だ。役割の細分化、専門化が進んだ最近では守備的なポジションならどこでも、サイドなら上下を問わず、といった具合に選手の万能性にも変化が生じてきたが、いずれにしてもスペシャリストと対を為す存在は今なお重宝され、何より有用だ。

好調の名古屋グランパスだが一方でチームは欠場者の続出に悩んでいる側面がある。リーグ6節の大分戦で阿部浩之と米本拓司が負傷し、順調な回復を見せているものの復帰はまだ先になる。新加入のオ ジェソクはコンディション調整に時間がかかり、フィッカデンティ監督によれば全体練習合流がつい数日前のこと。新型コロナウイルス罹患からの復帰を目指す宮原和也と渡邉柊斗も全体合流に至っておらず、大勝を収めたリーグ9節浦和戦ではジョアン シミッチが負傷し今も調整中だという。米本の離脱でただでさえ手薄なボランチにまたも離脱者が出たことは、川崎Fという強敵を迎え撃つYBCルヴァンカップ3節において、大きな痛手であることは間違いない。

ただし、こういう時こそチームの地力、底力を見せるべきでもある。レギュラークラス3名のうち2名が離脱したボランチでは、秋山陽介が虎視眈々と、そして粛々と試合に向けた準備を整えている。中盤の底は早稲田大4年時に経験したポジションではあるが、高校時代、そして名古屋入りしてからはそのほとんどを左サイドで過ごしてきた。今季のスタートも左サイドバックがその定位置だったが、「どこのポジションでもできると思っているし、そこでしかできない自分のプレーというのをもっと増やさないといけない」と、チームの要求にプラスアルファをもって応える気概は頼もしくもあり、清々しくもある。

大卒からのプロ3年目で、昨季はシーズン途中で磐田への期限付き移籍を経験するなど、現状打破への意識は強い選手だ。今季は「サッカー選手はまずアスリートであるべき」とするフィッカデンティ監督の下での再出発を期する上で、プレー強度の向上にその意識を傾けてきた。流通経済大柏高から早稲田大という経歴は、彼に豊富な運動量が備わっていることを保証するが、そこにパワーも同時に求めるのがマッシモ名古屋の基礎である。加えて戦術的要素も強いスタイルを採る中で、秋山は思考と運動の両輪をフル回転させることを常に考えている。

「強度はどのポジションにしてもそうですが、特に中盤ではヨネくん(米本拓司)や(稲垣)祥くん、ジョアン(シミッチ)の強度は高く、ボールを奪っているシーンも多い。自分がそのポジションをやるのであれば、意識しなければいけない部分ですし、早くポジションを埋めることやボールホルダーに対するアタックの強度も常に意識しながら練習しています。攻撃面でも頭の回転というところは意識しているところで、選手の位置を見ながら自分はどこに入るべきかを考えていますし、ひとつ、ふたつ先のプレーは予測しながらやるようにしていますね」

YBCルヴァンカップ前節の清水戦ではボランチに始まりサイドハーフでもプレー。リーグの浦和戦では4-3-3のインサイドハーフもこなすポリバレントぶりだった。ちなみに清水戦でのサイドハーフは右サイドで、シーズン再開直前の岐阜との練習試合では右サイドバックも経験。左の専門家だった過去を思えば、秋山のプレーの幅はさらなる拡大を見せている。両サイドバックにボランチ、インサイドハーフ、サイドハーフで計5ポジション。それらをただ任されるだけでなく、「そこでしかできない自分のプレー」を目指す姿勢で闘う秋山の姿には声援を送りたくなるひたむきさがある。差し当たっての川崎Fとの戦いでは、「川崎Fができることというのを、川崎Fだけができることにせず、走らされるだけではなくて、こちらの時間帯も長くしていかなくては」という指揮官の期待に応えなければいけない。

「相手は良いチームですが、自分たちもとても良い状態だと思いますし、だからといって変に身構えすぎてもいけません。自分たちはしっかりと準備をして、戦っていきたい。僕もまずは攻撃の流れを止めないように、隙があれば縦パスをつけていく。縦だけでなく幅を使ってそういうパスをつけられるのは自分の良いところでもあると思うので、どんどんやっていきたいですね。そしてチームの好調さに自分も加わっていくためには、どこのポジションにどのタイミングで入っても、同じ強度でやることを続けていかなければいけませんし、さらに自分の持ち味である積極的に仕掛けていくところやハードワークのところを出していかないと」

戦術的にも試合展開の想定においても理路整然とした準備をする現在の名古屋は、秋山のような出場機会が限られている選手たちにも全力を尽くさせる明確さに満ちている。「試合中に修正ができるのはそういうところもあると思う」と言う秋山もまた、どこで何をするかがはっきりしているからこそ持ち味と自覚する万能性を発揮しやすい。課せられたタスクの消化とプラスアルファの自分のプレー、万能型に求められる課題を一つひとつクリアしていきながら、秋山陽介はさらなるレベルアップと主力への道を模索し続ける。


文:今井雄一朗(名古屋担当)


JリーグYBCルヴァンカップ 第3節
8月12日(水)19:00KO パロ瑞穂
名古屋グランパス vs 川崎フロンターレ
パロマ瑞穂スタジアム(名古屋グランパス)
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